デザイナー 進藤 篤が「こけら葺き」を再解釈
照明インスタレーション「SOME ECHOES」

インスタレーション「SOME ECHOES」

デザイナーでアーティストの進藤 篤は、新作の照明作品で構成したインスタレーション「SOME ECHOES」をサローネサテリテ2025で発表。日本の伝統的建築の屋根に用いられる「こけら葺き(ぶき)」の手法を再解釈した照明オブジェを披露した。

木材とアルミ材の2種類のタイプを制作した。

「空気感(ATMOSPHERE)をデザインすること」をテーマに据え、空間的視点を軸に活動を展開してきた進藤。今回は、神社仏閣などで用いられる、伝統的な日本特有の屋根工法である「こけら葺き」に使用される「こけら板」の職人協力のもと作品を制作した。本来は建物の外側にある「屋根」のために培われてきた職人技を「照明」というかたちで建物の内側に取り込むことを試みている。

「こけら板」は、一見するとシンプルな薄板でありながら、木材を1枚ずつ手作業で正確に割くという、緻密で熟練した技術が必要となる。こうした職人の手仕事から、板の表面には滑らかで美しい木目の凹凸が浮かび上がる。

中心部を貫く照明の支柱に対してランダムに立てられた薄板。合間から洩れる光が場にリズムをつくっている。

木材で作られた高さ2mのオブジェクトは、穏やかであたたかな光を放つ。

1枚1枚、手で割くことでつくられる「こけら板」。1300年以上受け継がれる職人の手仕事の集積ともいえる。

今回、進藤は2タイプの照明を制作。木工素材でつくられた高さ2mのオブジェクトは、木曽産のサワラ材を使用した。照明の支柱を中心に配置し、その光がランダムに立てられた黄色みの強い薄板に当たることで、穏やかな暖かさが感じられる。一方、アルミ素材による置き型のライトは、くっきりとした光のコントラストが特徴であり、澄み切った厳粛かつ静寂な森のような空気を周囲に漂わせる。

この照明について、進藤は「森を歩く時間からインスピレーションを受けた」と語る。「柔い地面を踏みしめ、木々の隙間から光が差し込み、静寂さのなかに生命の営みが垣間見えるような瞬間」をイメージして、空間にさまざまな気配が響き合い、生命の兆しを感じさせるライティングインスタレーションを構築した。End

アルミ製の置き型のライト。