MEMBERSHIP | サイエンス / 建築
2025.04.14 19:49
「生命は常につくり変えられながら維持される動的な平衡の状態にある」という「動的平衡」を提唱する生物学者の福岡伸一。彼がプロデュースを手がける大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのち動的平衡館」。建築家の橋本尚樹、展示演出のTakramなどの協力のもと、「いのちを知る」をテーマに、「生命観を根底から揺さぶり、生きること・死ぬことの意味や希望を再発見する体験」を届ける。このパビリオンで伝えたいメッセージについて、福岡に聞いた。
「クラスラ」の光の粒子は太古の昔にさかのぼり、細胞が生まれ、陸海空の生き物の姿に形を変え、現在に至るまで生命の歴史の流れを映し出す。「クラスラ」の技術協力はデザインイノベーションファームのTakram。(建築:橋本尚樹、展示演出:Takram)
「動的平衡」とは何か
パビリオンの名称となっている「動的平衡」とは、分子生物学を専門とする福岡伸一が提唱する生命哲学である。90万部を超えるロングセラーの著書『動的平衡』は、生命とは何かという人類の命題を生物学と哲学の視点から捉え直したものだ。
この動的平衡について、福岡は説明する。「私たちの身体を構成している細胞の中には、タンパク質や糖質、脂質など、数多くの分子があります。人間は生きるために食物や水、酸素などを摂取しますが、新しいものを体内に取り入れることでもともとあった分子を壊し、新たな分子をつくり出します。体内ではこの“破壊”と“構築”が高速に行われ、絶えず流動していますが、分子はある一定の状態、つまり“平衡”を保っています。この“動的”で“平衡”な営みこそが生きるということ、“生命”なのです」。