NEWS | 建築
2025.04.07 11:23
Photos by Dirk Weiblen
中国深圳市宝安区では、ビールをテーマにした商業施設「BREWTOWN」がオープンした。中国最大手のビールメーカー 華潤ビールが手がける同施設は、この地に根付くビール醸造の豊かな歴史と文化を体験できる空間である。
施設の設計は、上海・アントワープ・シカゴに拠点を置く建築設計事務所 AIM Architectureが手がけた。同事務所は、「優れたデザインはひとつのストーリーを物語るものだ」というコンセプトのもと、ビールの製造技術を再解釈。廊下やアトリウムといった空間を、原材料が人々を結びつける特別な飲み物へと変化する複雑な醸造工程に見立てた。
さらに、細部にも工夫を凝らし、ブラシ仕上げのステンレススチール、温かみのあるテラゾ、穴あき銅版、スタッコ仕上げなど、醸造施設らしさを感じさせる素材を厳選。空間の高低差を活かしながら、設置が必要なダクトはあえて露出してデザインに組み込み、ビールの醸造装置のような雰囲気を演出するほか、換気・冷房システムにおけるエネルギー消費の最適化も実現している。
光もまた、BREWTOWNのデザイン要素だ。単に空間を明るくするだけでなく、あえて影となる部分をつくることで、建築のディテールを際立たせ、来場者の動線を自然に導く。天井の開口部からは自然光が差し込むように設計されており、人工照明の使用を抑えて健康と持続可能性に配慮するとともに、空間への没入感を高めている。
もちろん、醸造工程をイメージしたBREWTOWNのねらいは、訪れた人々を楽しませることだけではない。地域に活気をもたらし、地元住民の居場所となるコミュニティハブとなることも重要な目的のひとつだ。そのために、フードエリアやアトリウムをはじめ、細部に至るまで、人々が集い、好奇心が刺激され、世代を超えて交流できる空間としてデザインされている。