NEWS | 建築
2025.03.17 10:37
© Roland Halbe
イタリアのナポリでは、2004年に地下鉄の新駅プロジェクトがスタートした。ノーマン・フォスターやマッシミリアーノ・フクサス、アルヴァロ・シザ、ドミニク・ペロー、カリム・ラシッドといった世界的な建築家たちが駅の設計を手がけるというものである。
このプロジェクトはトリプルAと呼ばれ、アート、建築、考古学の頭文字の3つのAをテーマに、特徴のないこの地区を際立たせようとするものだ。実際この敷地からはさまざまな考古学発見があり工期が何度も遅れている。マッシミリアーノ・フクサスの敷地では古代ローマ神殿が発掘され、現在、博物館の機能も持たせることになっている。
そのうちのひとつ、「チェントロ・ディレツィオナーレ・ディ・ナポリ(Centro Direzionale di Napoli)」駅がこのほど開業を迎える。新駅は、イタリア出身でバルセロナを拠点に活動する建築家ベネデッタ・タリアブーエ(Benedetta Tagliabue)率いるEMBTアーキテクツが設計を担当した。
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高層ビルが立ち並ぶこの地区は、建築家 丹下健三が1980年代に都市設計を手がけたことで知られる。今回の新駅プロジェクトでは、ナポリの火山がもたらす自然の土壌と、丹下が70年代にデザインした人工地盤をつなぎ、新しい関係性を生み出す目的があった。タリアブーレは丹下が設計した都市のグリッド上に、ナポリの旧市街からインスピレーションを得た木造の駅舎を乗せた。
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駅舎の特徴は、軽量な木材を使用した、1万平米におよぶ波打つアーチ型の天井。アーチ天井は石材やセラミックでつくられてきた古い鉄道駅を彷彿とさせる伝統的な形状で、人工的なオフィス街にあって森のなかを散策しているかのような感覚をもたらす。
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駅の天井には、プロジェクトのテーマ「AAA」にふさわしく、ポンペイで発見された考古学遺物の顔を描いたアート作品が飾られる。