「West Village」（成都・2015年）
photo courtesy of Chen Chen

2025年のプリツカー賞に、中国の建築家 劉 家琨（リウ・ジアクン、Liu Jiakun）が受賞。中国各地で40年以上にわたり、学校施設や文化施設、公共スペース、商業ビル、都市計画など30以上のプロジェクトを手がけてきた実績をもち、都市にコミュニティのつながりを生み出す独自の建築プロセスが高く評価された。

劉は、建築には文化や歴史、感情、社会といった多様な側面を調和させる並外れた能力があると考え、ユートピアと日々の暮らし、歴史性と現代性、個人主義と集団主義など、一見して相反するような要素を織り交ぜつつ、市民の日常生活を豊かにする建築を提案してきた。

「West Village」（成都・2015年）
photo courtesy of Qian Shen Photography

1区画全体を利用した5階建ての複合施設「West Village」（成都・2015年）では、カルチャーやスポーツ、レクリエーション、ビジネスといった活気に満ちた都市の活動を一体化するほか、自転車や歩行者専用の開放的な通路を設け、周囲の自然を楽しむなど、一般的な中・高層の施設とは視覚的にも文脈的にも異なる建築に仕上げている。

「West Village」（成都・2015年）
photo courtesy of Li Ziqiang

「West Village」（成都・2015年）
photo courtesy of Jiakun Architects

一方、「Suzhou Museum of Imperial Kiln Brick」（蘇州・2016）のフラットな庇や「Novartis (Shanghai) Block – C6」（上海・2014）のバルコニーなどは、中国の古典的な建築を現代風に再解釈したものであり、同国の文化や歴史、自然を称えている。

「Suzhou Museum of Imperial Kiln Brick」（蘇州・2016）
photo courtesy of Yao Li

「Suzhou Museum of Imperial Kiln Brick」（蘇州・2016）
photo courtesy of Jiakun Architects

「Novartis (Shanghai) Block – C6」（上海・2014）
photo courtesy of Arch-Exist

「Novartis (Shanghai) Block – C6」（上海・2014）
photo courtesy of Arch-Exist

劉は「建築とは何かをはっきりとさせるものでなければなりません。つまり、地元の人々がもつ本来的な特徴を抽象化して抽出し、可視化するのです。建築には人間の行動を形成し、さまざまな雰囲気をつくり出し、安らぎと詩情を与え、思いやりや共感をかき立て、共同体のつながりを育むための力があります」と語る。

プリツカー賞を主催するハイアット財団のトム・プリツカー会長は、「彼の建築には知恵があります。つまり、目に見える部分の先にあるものを哲学的に見据え、歴史や素材、自然が共生していることを明らかにしているのです」と劉の建築を評した。

「Luyeyuan Stone Sculpture Art Museum」（成都・2002）
photo courtesy of Bi Kejian

「Department of Sculpture, Sichuan Fine Arts Institute」（重慶・2006）
photo courtesy of Arch-Exist

劉家琨
photo courtesy of The Hyatt Foundation/The Pritzker Architecture Prize