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2025.03.03 19:30
エンジニア集団nomenaを率いる武井祥平が、日々の気づきを通じて、工学的発想やデザインとの関係を綴る。
Photo by Masaki Ogawa
工学をベースとした表現の営みにおいて、私が意識していることのひとつに「軽やかさ」というキーワードがある。一般的な工学の実践では、あらかじめ設定された目的を最も効率よく達成する方法が選択される。その結果として完成する工業製品には、つくり手の意図がはっきりと反映され、その意図と異なる解釈を許さない一義性が現れる。このような性質は、産業分野において利便性や安全性を保証するためには非常に大事なことだが、一方、表現の領域においては、多義性や解釈の余地といった不確実性が残されていることが本質的であるように思う。一定の意図をもってつくられたにもかかわらず、その意図を感じさせない「軽やかさ」があり、それによって受け取り手に解釈の自由が保証される。優れた作品には、そのような性質があるように思う。