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2025.02.20 16:14
この連載では、デザイン史の研究をしている著者が独自の視点で選んだ過去のデザイン作品(ピース)を起点に、それが生み出された時代背景や社会での受容、デザイナーについてなど、さまざまなエピソードを綴っていく。今はまだ歴史の一部として広く認識されていないデザインのなかにも、面白いもの、今だからこそ紹介したいと思えるものがたくさん存在する。デザイン史をジグソーパズルに例えるならば、ここで紹介する事柄は、どこにはまるかはまだわからない1ピース。それらを組み合わせていけば、まだ見ぬデザイン史のイメージを浮き上がらせることができるはずだ。
デザイン史は、ヨーロッパやアメリカを中心に発展した学問だが、植民地主義や西洋中心主義から脱却しようという歴史認識の転換もあり、ここ10年ほどでアジアのデザインに焦点をあてた論文や雑誌記事を目にすることが増えた。日本は、デザイン振興の歴史が長く、先行研究の数も多ければ、歴史的な展示も定期的に開催されているため、時代を象徴するアイコニックなデザインの例に事欠くことはない。しかし、ほかのアジア圏の国々で誕生した名作デザインの例をあげよと言われてもすぐに頭に浮かんでこないものだ。ということで今回は、最近私がシンガポールのデザイン史について調べるなかで出合ったピースを紹介したい。