NEWS | ソーシャル / プロダクト
2025.02.13 13:07
生産効率やコストが優先されがちな風潮がある一方で、そういったものに縛られない、むしろ逆行するかのような価値観でデザインを行うデザイナーもいる。本シンポジウムでは、そういったデザインのありかたを通して多様な人々とのものづくりや、デザインの役割について考える。
主催するのは、デザイナーやイラストレーターなどを中心に主に障害者福祉分野のデザインワークを行う任意団体TOKYO SOCIAL DESIGN。代表の加藤未礼さんは「様々な制約がある中で丁寧なリサーチを重ね最善策を導き出すデザインプロセスには、福祉領域に限らずどんな課題のある現場にも通貫する学びがあるはず」と言う。
今回登壇するゲストは、ユーザーの使い勝手を最優先に考え、独自の徹底したリサーチと素材へのこだわりから生まれる唯一無二のプロダクトで知られるポスタルコ、「 福祉とあそぶ 」をテーマに、デザインの力を最大限に生かしたブランディングで魅力的なプロダクトを次々と生み出すHUMORABO、プロダクトデザイナーであり、現在常滑を拠点に福祉の現場でのプロジェクトに取り組み始めた高橋孝治さんの3組。それぞれデザインへの向き合い方、いちばん大事にしていることなどを伺いつつ、来場者との意見交換を交えた後、ネットワーキングを行う。より良い未来のために必要なことは何か、人間中心のデザインとは何か、いま一度考えてみたい。
毎日使う物を先入観なしに観察して、そこにモノ作りの契機とヒントとインスピレーションを見つけるというPOSTALCO。服については、自由に動けるという心地良さを追求し、可動領域が広い構造を開発。徹底的に身体の動きの解析を行う。
風合い豊かな「NOZOMI PAPER®︎」(手漉きの再生紙)。HUMORABOがディレクションを行う南三陸のNOZOMI PAPER Factoryでは、全国から届く不要になった牛乳パックなどを素材に福祉施設のメンバーがひとつひとつ丁寧に漉いてつくる
Photo by Ami Harita
福祉施設を見学する来所者に対して、ワークウェアを着たメンバー(利用者)が紙漉きの仕事を教える。「障害者」ではなく「紙漉きの先生(職人)」として関わることで、メンバーの働く意識も、一般の人の障害のある人に対する意識も変わる。そんな環境づくり、仕組みづくりもデザインの重要な役割だ。
「あそか病院 南棟」(東京都江東区、2024竣工)内につくられた柱状タイルのオブジェ。高橋さんディレクションのもと、常滑の水野製陶園ラボ、障がい者就労支援福祉施設「ワークセンターかじま」と協働して制作された。高橋さんは、同施設に週1回、勤務している。発注した建築事務所AIDAHOからは、障がいのある方と協働したいと提案があった。Photo by Takumi Ota Photography
スクラッチタイルは、ワークセンターかじまの利用者がフォークを使って制作。つくる人によって表情が変わることで木肌のような風合いが生まれた。Photo by Koji Takahashi
TOKYO SOCIAL DESIGN デザインシンポジウム 2025 ー誰かのためのデザインー
- 日時
- 2025年3月8日(土) 13:00~18:00
- 定員
- 100名
- 参加費
- 一般 4,400円(税込)学生割引 2,200円(税込)オンライン 2,200円(税込) ※オンライン参加者には後日アーカイブ動画を送ります
- 主催
- TOKYO SOCIAL DESIGN
- 企画協力
- AXISギャラリー
- トークゲスト
- マイク・エーブルソン、エーブルソン友理(POSTALCO)、前川雄一、亜希子(HUMORABO)、高橋孝治
- モデレーター
- 加藤未礼(TOKYO SOCIAL DESIGN)、佐野恵子(AXISギャラリー)
- 会場
- AXISギャラリー
(東京都港区六本木5-17-1) - 詳細・申込み
- Peatix
【プロフィール】
Postalco Design Studio/マイク・エーブルソンとエーブルソン友理によるデザインスタジオ。日々の暮らしに着目した独自の製品を、東京を拠点に作り続けている。革製の書類入れから、衣類、ペン、キーホルダー、バッグなどに独自の考えが応用されている。性別、年齢、国籍を問わず愛されるプロダクトは、使い捨てが増える時代において永く使われることを想定して作られ、生活することを軽くみないで、そこにこそ驚きや、発見のよろこび、Fun(たのしさ)をみつけようとする姿勢につらぬかれている。そのデザインはUnderstatement(控えめ)でありながらUtility(実用性)にすぐれていて、どこかしらWarmth(ぬくもり)がある。
POSTALCO
Photo by Ami Harita
HUMORABO/前川雄一と亜希子によるデザインユニット。2007年に障害をもつ人の表現(アート)に出会い、福祉施設商品の企画・販売を通じてその魅力と課題を実感。デザイン× 福祉のさらなる可能性を実現するため、2015年からユニットとして活動を開始しました。福祉施設でつくられる手漉きのリサイクルペーパー「 NOZOMI PAPER®︎ 」のブランディングをはじめ、『福祉とあそぶ』をテーマに、デザイナー夫婦ならではの二つの視点で、社会と福祉の楽しく新しい関係を探っています。
HUMORABO
Photo by Ritsu Takahashi
高橋孝治/デザイナー。1980年大分県生まれ。多摩美術大学生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻卒業。良品計画に12年所属し無印良品の生活雑貨のデザイン、防災プロジェクト「いつものもしも」を立ち上げる。2015年-中世より窯業が続く日本六古窯の一つ愛知県常滑市に拠点を置き、ものづくりを軸に活動を行う。常滑市長三賞陶業展(42-45回)審査員 2016-2018年 常滑市陶業陶芸振興事業推進コーディネーター 2017-2019年 六古窯日本遺産活用協議会クリエイティブディレクター 2022年 常滑急須「chanoma」グッドデザイン賞 BEST100・グッドフォーカス賞 2023年 土を基礎とし領域を超えて繋がる集団「スベル」結成。2024年-京都芸術大学大学院芸術研究科准教授。
高橋孝治デザイン事務所