2025年1月10日(金)から12日(日)の3日間、世界最大級のカスタムカーと関連製品の展示会「TOKYO AUTO SALON 2025」が幕張メッセで開催されました。本イベントは“カスタムカー文化の確立”を目指し、1983年「東京エキサイティングカーショー」 としてスタート。1987年に名称を「TOKYO AUTO SALON(以下TAS)」と改め、今年が43回目の開催となりました。1回目から約40年という歴史のなかで、展示内容は消費者の嗜好や社会動向に追随しながら変化を遂げてきました。2025年はどのような意匠が見られるでしょうか、早速レポートしていきます。
THEニュートラル ホワイト・ブラックの拡大とマットグレー
上段:SUBARU LAY BACK(左)とPorsche
中段:左からMAZDA CX-60、TOYOTA RAV4、BMW Mパフォーマンス
下段:強い干渉効果色を使用した車両の一例 FIAT 500(左)とNISSAN Hyper Punk
イベント会場は無機質な空間の中に青や赤、白、黒とさまざまなカラーのクルマが並び、まるで一般道を走る車列のような景観が広がっていました(冒頭写真参照)。並んでいる車両を観察するとホワイトは昨年同様に多く、ブラックとマットグレーの車両が増えていることがわかりました。モビリティショーでよく見られた強い干渉効果でテクノロジー感を表現したホワイトやグレーは少なく、あくまでも“無彩”を貫き、輝きや陰影で表情変化を施した潔い硬派な質感が主流。また、グレーには光沢を抑えたマットが多用されており、スポーティーな印象を強めていました。
スローな雰囲気のグリーンを纏うスポーツカー
上段:PORSCHE 911(左)とTOYOTA_GR Yaris
下段:左からBMW M4(奥)、TOYOTA_GR Supra(手前)、Rolls Royce
昨年はイエローやオーカーの暖色が多く見られましたが、今年はグリーン系の色が目立ちました。一般車両で増加しているグレイッシュなグリーンと比べると彩度がありつつも鈍く、味わいのあるグリーンで、質感はソリッド調や柔らかい光を放つメタリックが多く使われていました。多肉植物や森を連想させる穏やかでスローな雰囲気のカラーがレーシングカーを彩っていることもユニークでした。
ソフトメタリック、同系色でのコントラスト・奥行感表現
上段:Mercedes Benz SLR
下段:NISSAN SKY LINE
また、ここ数年の自動車カラーではソリッドライクな質感(角度による表情変化が少なく、粒子感が小さい見え方の総称)がトレンドです。今回は粒子感がありつつも強いコントラストは感じられない“ソフトメタリック”といった、懐かしくも新しくも感じる質感がじわじわと存在感を増していました。
同系色異質感のコンビネーションでさりげない奥行感と立体感をプラス
上段:MITSUBISHI DELICA “ACTIVE SEEKER”(左)とMITSUBISHI_OUTLANDER PHV “NIGHT SEEKER”
下段:ソリッドのボディ×多色ラメのフェンダー(左)とホイール各種(蒸着金属感×輝度感×ホログラムのような干渉効果)。
2トーンやマルチトーンの組み合わせが少なかったことも今年の特徴だと思います。その代わりに目を引いたのは、同系色と異質感の組み合わせです。近い色味に質感の違いをつけることで、自然な奥行き感やさりげないゾーニング効果が得られます。大胆にパーツを跨いだ加飾でも、全体の統一感を分断することなく個性を表現できていました。今回のレポートを通じて “眼で判別できる唯一無二感はなくとも、日常に馴染んでいるディテールを深く共感したい”という流れをTAS2025のムードから感じました。
下記の表は2020年以降のTASの特徴をまとめたものです。
車両デザインの傾向は、2020から3年ほど主流だったアウトドア仕様/1人空間の提案から、実用性を維持しつつもクルマとして走る楽しさを追求する方向性が強まってきました。
カスタマイズ=目立つといったムードは色薄くなり、ディテールや内面的な部分を追求し分かる人同士でこだわりについて話し込む、そんな情景が今後のTASの1シーンとして定着していくのではないでしょうか。日々変化するカスタマイズ文化は今後どのように表現され継承されていくのか。調査側の観察視点も常にシフトチェンジし、企画に生かそうと心に留めました。早くもTAS2026が楽しみです。