Apple Vision Proが発表されたとき、筆者は、それが視覚障害者のための「AIの眼」になり得るデバイスだと思った。
Apple自体はApple Vision Proを屋外での歩行時に使用することを推奨していないが、仕様上は内蔵カメラやLiDARによって外界をセンシングし、AIによる解析結果をユーザーに音声で伝えることで、周囲にある物体や向こうから歩いてくる人が知り合いかどうかなどを判別できるだけの能力を備えている。ただし、そういう目的のみを考えるのであれば、Apple Vision Proのスペックは過剰であり、ディスプレイを省くだけでもかなりのコストダウンを図ることができる。
ルーマニアのスタートアップである.lumen(ドットルーメン)が開発した.lumen Glasses(ドットルーメン・グラス)は、まさにそのような仕様を持ち、視覚障害者があたかも盲導犬を連れているように、危険を避けながら目的地までのナビゲーションを行ってくれるデバイスだ。
自動運転技術を応用した「PAD AI」と呼ばれる歩行者自律歩行支援AIを搭載し、イメージセンサーと深度センサーを使用して障害物を検知。触覚フィードバックと音声フィードバックを9:1の割合で併用することで、ユーザーを安全に目的地まで誘導する。
ちなみに、イメージセンシングにはインテルのRealSenseテクノロジーによるコンピュータビジョンを採用しており、ルートナビゲーションや、ベンチなどの特定のオブジェクトの位置特定にはGoogle Mapが利用されている。
.lumenの創業者であるコーネル・アマリエイは、彼以外の家族が全員障害を持つなかで育った経験から.lumen Glassesの開発に取り組み、数カ月以内にヨーロッパで発売予定の第一世代モデルに加えて、第二世代モデルの開発にも着手しているという。
すでに100万ユーロの資金調達に成功し、CES 2025でも注目を集めた.lumen Glassesは、視覚障害者の生活の質を確実に向上させることだろう。