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21時間前
デザインを専門とする、あるいはデザイン周辺にいる人々が、自らのデザイン観とともに、世の中のさまざまな事象を語り、考える。
装置としての詩
フランスの詩人ポール・ヴァレリーは、詩を「装置」として捉えていた。この装置の目的は、読者の隠れた身体的機能を開拓すること。つまり、まるで筋トレマシンのように、詩を使って読者の身体のポテンシャルを目覚めさせることを彼は考えていたのである。
ヴァレリーが生きたのは、19世紀末から20世紀前半にかけての、急速な都市化が進んだ時代である。高層建築が立ち並び、雑誌には商品の広告があふれ、頭上には航空機が飛ぶ。そんなヒューマンスケールを超える刺激が増えるなかで、ヴァレリーは、人間は身体を失いつつあると考えた。テクノロジーの発達が身体感覚を鈍らせるという言説は、どの時代にも見られる世の常なのだが、ともあれヴァレリーの時代にも、このような感覚が共有されていたわけだ。
ヴァレリーの「詩=装置」プロジェクトは、そんな時代背景のなかで生まれた。そもそも詩の特徴は簡単には読めないところにある。