NEWS | 展覧会 / 工芸
2024.12.20 17:17
京都市中京区のHOSOO GALLERYでは、展覧会「庭と織物──The Shades of Shadows」が2025年3月16日(日)まで開催中。日本庭園・能楽の研究者である原瑠璃彦、建築デザインスタジオ ALTEMY、京都・西陣織 HOSOOの職人が協業し、日本庭園をテーマに織物・映像・音からなる総合的なインスタレーションを披露する。
原は、人と自然環境のインターフェースとして古くから多様な展開を遂げてきた日本庭園を取材し、その歴史を踏まえつつ、日本庭園の新しい解釈による表現を行う「庭園アーカイヴ・プロジェクト」を手がけている。
今回は、西陣にあるHOSOOの織物工房「HOUSE of HOSOO」の坪庭を12カ月にわたって3Dスキャンを行うなど、さまざまなかたちでアーカイヴを構築。そのデータをもとに約3年の継続的な議論と実験を重ね、絶えず変化する庭の姿を織物で表現することを目指した。
また、古くから多くの文化圏にある織物と庭園は、自然の要素を再構成する空間的・身体的な装置である。そして、日本庭園には、捉え難くうつろい続けるさまざまな「かげ」が存在する。たとえば、庭に立つ石や植物が光を浴びて落とす影は、人の目を楽しませる。日本庭園の池の表面は、ちらちらと複雑に光る「かげ」を生じさせると同時に、周囲の風景を鏡のように「かげ」として反映し、水のない枯山水庭園では、水の代わりとなる白砂は複雑な陰翳を演出する。
同展では、HOUSE of HOSOOの坪庭の3Dスキャンから得たデータによる映像インスタレーション「4次元のかげ The Shadows of 4D Garden」、坪庭の点群データを基に設計された特殊な箔糸を用いた織物のインスタレーション「かげのかげ The Shades of Shadows」、色を排除し織物の立体構造の「かげ」を純粋に浮かび上がらせる「色のない庭 The Achromatic Garden」と、「かげ」をテーマとする3つの新作をメインに構成。さらに、庭で立体録音を行ったサウンド・インスタレーションも展開する。
オープン日の12月7日にはHOSOO GALLERYでトークセッションも開催された。
同展は井高久美子が山口情報芸術センター[YCAM]在籍時の2015年にキュレーションした公園のリサーチプロジェクト「Promise Park」に端を発する。そこでは韓国のアーティストであるムン・キョンウォンの発案で17×17mという巨大な織物の絨毯を制作することになったのだが、そのコラボレーション先としてタッグを組んだのがHOSOOであった。そして細尾真孝は、このプロジェクトがきっかけとなり、織物の可能性を探る各種R&Dを立ち上げることになるのだが、そのアウトプットの場として2019年にオープンさせたのがHOSOO GALLERYであった。彼は常々「織物とはメディアである」と語っているが、今回の「庭と織物──The Shades of Shadows」にもその思想が色濃く現れている。
一方で、同展の織物共同開発と空間構成を担ったALTEMY代表の津川恵理は、複雑な要素で成立している「庭」と重厚な歴史がある「西陣織」を組み合わせることに当初はかなり苦心したようだ。しかし坪庭やHOSOOの工房を訪れることで両者を入念にリサーチした結果、「織物を見てその背景にある庭園を感じることができる」空間構成を目指した。例えばHOUSE of HOSOOの坪庭とHOSOO GALLERYの展示スペースはほぼ同じ面積であり、鑑賞者はここで展示された織物を見ることで坪庭やそこでの季節の変化をいわば擬似体験することが可能なのだ。
原が「リサーチプロジェクトであるのと同時に、庭の新たな可能性を探る実験的プロジェクトでもある」と語ったように、同展ではさまざまな手法で取得したアーカイヴに立脚しながら、多層的な時間、そして静と動が交錯する新しい庭と織物の姿が楽しめるだろう。
庭と織物──The Shades of Shadows
- 会期
- 2024年12月7日(土)~2025年3月16日(日)
- 開館時間
- 10:30~18:00
※祝日・年末年始を除く。入場は閉館の15分前まで。 - 入場料
- 無料
- 会場
- HOSOO GALLERY(京都市中京区柿本町412 HOSOO FLAGSHIP STORE 2F)
- 詳細
- https://www.hosoogallery.jp/exhibitions/shades-of-shadows/