3年目を迎えたグッドデザイン・ニューホープ賞にみる
若手のピュアな熱量

GOOD DESIGN NEW HOPE AWARD 2024

公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「グッドデザイン・ニューホープ賞(GOOD DESIGN NEW HOPE AWARD)」は2024年12月7日(土)、最終プレゼンテーション審査に進んだ8組のなかから、最優秀賞に「入院している小学生を対象にしたあそびのスターターキット『アドベンチャーBOX』」を選出した。

2022年度にスタートした同アワードは、次世代のデザイン分野を担う若い才能を支援することを目的としている。「物のデザイン」「場のデザイン」「情報のデザイン」「仕組みのデザイン」の4つのカテゴリに分かれ、今年度は日本全国から過去最多の606件の応募があった。

「想い」をつなぐデザインプロセス

最優秀賞に選出された同作品は、入院している小学生にあそびを届けるスターターキット。「アドベンチャーBOX」のなかには、独自に制作したオリジナルの絵本と工作キットが入っており、「ベッドの上から冒険を始めよう!」を合言葉に、置かれた環境を何かに見立てたり、心の赴くままに想いを表現する創造的なあそびを通じて、闘病体験を前向きな物語に紡ぎ直すきっかけを提供する。

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作品名:入院している小学生を対象にしたあそびのスターターキット「アドベンチャーBOX」
受賞者:猪村真由(慶應義塾大学看護医療学部看護学科 既卒)、板谷勇飛(慶應義塾大学環境情報学部 B3)、飯島百々葉(埼玉大学教養学部教養学科 B3)、松井晴大(慶應義塾大学総合政策学部 B4)

プレゼンターを務めた猪村は、「子どもたちにとってあそびは、自己表現や創造性を育む本質的な活動であり、病気や治療と向き合うなかで『自分らしさ』を取り戻す大切な手段です。同時に、あそびは子どもたちが社会とつながるための共通言語でもあります」と語る。例えば、入院中に限らず、退院後から学校に通えるようになるまでの間においても、孤独を感じてしまう子どもたちも少なくないそうだ。そんなとき、自治体や地域社会が提供するフリースクールなどの制度や仕組みを活用できるように、医療現場を中心にコミュニティを形成し、あそびを媒介とした連携がデザインされている。実際にフィンランドやスウェーデンの子ども病院を回りながら、子どもたちのウェルビーイングに視点を置いた関わり方を学び、日本において実現できていない取り組みに着手している。これは同作品が「物のデザイン」としてだけでなく「仕組みのデザイン」として評価された理由でもある。

POCO プレゼンテーション

猪村の最終プレゼンテーションは、絵本を読んでいるような温かみに溢れていた。

「私たちは、デザイナー、医療専門スタッフ、子どもたちやご家族、さまざまな立場の声を丁寧に聞き、そこから生まれる『想い』をつなげることで、子どもたちのための明るい未来を形にしていく役割を担っていると考えます。 こうした多様な視点や専門性を掛け合わせ、みんなでより良い療養環境を社会全体でつくり上げていくことが私たちの取り組みです。また、その共創のプロセスから生まれる新たなデザインのあり方が、今回の受賞で評価していただいたのだと感じています」と続けた。

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グッドデザイン・ニューホープ賞の進化とこれから

審査委員長の齋藤精一(クリエイティブディレクター/パノラマティクス主宰)は、「設立3年目となるニューホープ賞は、グッドデザイン賞の応募にはないような若いアイデアを募ろうと始まったものですが、もはや『学生の賞』の域を超えています。先日、グッドデザイン大賞が選出されて総括として浮かび上がってきたのが、『はじめの一歩から ひろがるデザイン』でした。ひとりとその周りにいる人たちが同じ熱量と哲学を持って始めることが、非常に重要だと思っています。皆さんのピュアな熱量とモチベーションは絶対に忘れないでほしいですし、私たち大人こそ、その視点や姿勢を学ばないといけないと思いました。今後も、いま持っている熱量と自分の視点を大切に、芽を伸ばしていってほしいです」と講評を述べている。(文/AXIS 大内康太郎)End

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審査委員長の齋藤精一(クリエイティブディレクター/パノラマティクス主宰)。

GDNH2024 Nagayama

審査副委員長を務めた永山祐子(建築家/永山祐子建築設計)は、将来的な発展の可能性を含めて背中を押すことがこの賞の役割りであると考え審査にあたったと述べた。

2024年度 グッドデザイン・ニューホープ賞 優秀賞

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作品名:KANZOO
受賞者:猪瀬 陽(筑波大学芸術専門学群情報・プロダクトデザイン領域 既卒)

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作品名:Cement Project
受賞者:笹川陽子・杉浦真也(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 既卒)

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作品名:日常の死角に夢を見る。
受賞者:中川優奈(工学院大学大学院工学研究科 建築学専攻 M1)

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作品名:Tokyo Dead Space 100 -空いてるスペース使ってもいいですか?
受賞者:沼野 航(東京都立大学システムデザイン学部インダストリアルアート学科 既卒)

finalist Libritude

作品名:Libritude
受賞者:妹尾竜矢(千葉大学大学院融合理工学府創成工学専攻デザインコース M1)

finalist block_craft

作品名:きのこぐものしたにあったまち-ブロッククラフトで学ぶ広島・長崎歴史探訪ワークショップ-
受賞者:片山実咲・濱田璃奈・村山美耶子・濱津すみれ・森吉蓉子(東京大学大学院学際情報学府文化・人間情報学コース)、山口温大(同先端表現情報学コース)

finalist KOSODATENOMIKATA

作品名:コレクティブインパクトプラットフォーム“コソダテノミカタ”
受賞者:田中惇敏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)