MEMBERSHIP | 建築
2024.12.09 18:24
少子化が叫ばれ続ける現代においても、幼児教育の重要性は増す一方だ。子どもを預かってほしいという「保育ニーズ」と家庭ではできない学びを体験させたいという「教育ニーズ」の狭間で、最近の保育園・幼稚園はどのような試みを実践しているのか。全国の注目すべき3つの園を紹介する。
しぜんの国保育園
子どもこそが開拓者
1979年、東京都町田市に開園した、しぜんの国保育園(以下、しぜんの国)。自然・食育・芸術を基盤としたユニークな保育実践を行う認可保育園として、国内外から注目を集めている。2008年からこの園の運営に関わってきた齋藤紘良は、「型が決められがちな保育の流れに疑問を感じていた 」と、保育にまつわる世界中の哲学や理論を学んできた。
子どもとの時間を積み重ねるうちに、「彼らは、僕ら大人が当たり前のように受け入れている社会の概念や枠組みの内で生きているわけではないことに気がついた」と、齋藤は言う。「よく考えれば当然なのですが、私たち人間は、生命としての五感がまず先にある『感覚的世界』の中に生きている。子どもたちと触れ合っていると、この感覚的世界に戻ることができ、自分自身のフレームが次々と解体されていく心地よい瞬間がいくつもあって。それは、新しい音楽を聴いたり、芸術作品に触れたりするのに似た感動や驚きでした」。
しぜんの国には、開園当初から「すべて、こども中心」という保育哲学がある。これを、具体的にどう実践していけばいいのか。齋藤は、今の時代に見合った彼なりの解釈を探す。「感覚的世界を生きる子どもたちをまんなかに置いて、大人側が子どもとともに共同体をつくることを当然とするのがこども中心」。14年には、そんな想いを実践するべく、新園舎が建てられた。