デンマークの建築設計事務所 BIGによる
コペンハーゲンの港に面した新社屋

© Laurian Ghinitoiu

建築家 ビャルケ・インゲルスが率いる、世界的な建築設計事務所 BIG。その新社屋が、デンマーク・コペンハーゲンの港沿いに完成した。港湾エリアの倉庫や工場といった建築遺産とシームレスにつながるデザインが特徴だ。

桟橋のたもとに立地し、敷地面積が非常に狭いことが設計上の課題だった。スタッフそれぞれの作業環境を確保しつつ、つながりのあるオフィスを構築する方法として、BIGは4階建てのフロアを水平に分割し、実質的に2倍のフロア数をつくり出したことで、7階建てとなっている。各フロアの中央には、滝のように連なる階段を設置。これにより、作業スペースが一体化したダイナミックで開放的な空間が生まれた。

高さ3mのガラスパネルで構成されたエントランスを抜けると、1階には展示スペースやレストランがある。各フロアを支えるのは市松模様のように梁と窓が交互に配置された7つのファサードで、そのうちのひとつは三角形になっており、テラスや非常階段としての機能も兼ね備えている。また、各階のバルコニーは階段でつながっており、らせん状の屋外空間を山道のように屋上まで登れば、港の風景が一望できる。

地上の庭園デザインは、BIGの造園チームによるもの。デンマークの砂浜と海岸林からインスピレーションを得て、かつて駐車場だった1,500平米の空間を公園と遊歩道へと生まれ変わらせた。北側に植えられた松や樫などが港に吹く厳しい風を防ぐ一方で、南側には植栽だけでなく岩なども配置し、多様な生物に住み処を提供している。木々のあいだには、アメリカのアーティスト ベンジャミン・ラングホルツ(Benjamin Langholz)の彫刻作品「Stone 40」が設置され、公園のシンボルにもなっている。

この建物には、CO2排出量を約25%削減する「FutureCem」コンクリートの採用をはじめ、太陽光エネルギー、地熱エネルギー、自然換気システムを導入している。これはランドスケープ、エンジニアリング、建築、プロダクトを専門とするデザイナーの共同作業によるものであり、BIGとして初めて、自然関連課題を評価する「LEAPアプローチ」を実現した建築となった。End