「亀の井別荘 五番館」
Photos by Hiroshi Mizusaki

1921（大正）10年に創業した大分・湯布院の「亀の井別荘」は、由布岳の麓、金鱗湖畔に位置する日本旅館である。約1万坪の広大な敷地には、離れや本館、土産処などの建物が点在しており、自然の林と一体になった趣のある風景をつくり出している。同館では段階的に改修を行っており、このうち「湯の岳庵」と呼ばれるレストラン棟と、「五番館」「七番館」という客室2室の内装設計を、二俣公一が率いるデザインスタジオ ケース・リアルが内装設計を手がけた。

「湯の岳庵」

レストラン棟「湯の岳庵」の改修では、茅葺屋根や重厚な梁組み、柱など、年月を感じさせる既存の建物の良さを生かしつつ、新たな見せ場をつくることを目指した。

エントランスには、ウォールナット材で仕上げたレセプションカウンターを設置。素焼きタイルの床やガラスの間仕切りにより、空間を緩やかに仕切りながら客を迎え入れる落ち着いた雰囲気をつくり出している。

2部屋の和室が中心となる約80平米の離れ「五番館」は、建具や壁の間仕切りが多い和室から露天風呂付きの洋室へと改装。4枚の引き違い扉による庭に面した開口部を、幅約4mの大判のガラス窓に変更し、ダイニングテーブルを設置して、庭の風景を感じながら食事を楽しめる場所を構成した。

「五番館」

また、約150平米の広さをもつ「七番館」の計画では、寝室が2部屋ある露天風呂付きの客室に改装。ひと繋がりの大きなリビングダイニングを中央に据え、必要な部屋はこれを囲うように配置した。パントリーやウォークインクローゼットなどのバック機能は庭の反対側に集約し、寝室やラウンジ、内風呂や書斎などは庭に面した位置にレイアウトすることで、部屋ごとに異なる庭の眺望を楽しめる空間が生まれた。

「七番館」