ビジョンの重要性/よりよい意思決定は個の意思を発動する

今、日本の行政や企業に必要なものとは何だろうか。未来のビジョンか? 揺るがない価値観か? —KESIKI代表の石川俊祐が、現代に求められる「意思決定のデザイン」を語る。

短期目標ではなく中長期ビジョンを

前回、なぜ今意思決定のデザインが必要なのか、という話をしました。今回は、よりよい意思決定をするための礎となる「ビジョン」について、僕らが関わっている事例とともに紹介します。ビジョンとはその会社や組織の「目指す姿、将来像」のこと。例えば会社で、上層部から「来期までにこの商品の売上を◯パーセント増やしなさい」と言われたとします。売上をいくら増やすというのは、言わずもがなビジョンではなく、短期的な数値目標にすぎません。そのために開発担当者は商品を見直し、営業担当者は既存の売上を伸ばそうとするでしょう。けれどその前に、そもそも「こんな未来をつくっていきたい。そのために当社はこんな役割を果たすんだ」というビジョンに紐づいた事業設定がなければ、社員ひとりひとりが自分の意志で取り組もうとはしません。僕は、よりよい意思決定とは個人の意思から始まると考えています。個々の意思が発動し、主体的に考え、そして創造的な手を打っていくためには、経済性、社会性、文化性(自分たちらしさ)という3つのバランスがとれたビジョンが必要となります。