視点モノローグ
#2「利己」

昔から宮沢賢治が苦手でした。自分を犠牲にして誰かを救おうとする彼の思想に、ちょっと利他すぎでしょと、全く共感ができなかった。「サウイフモノニ ワタシハナリタ」くないと思ってました。

でもあるとき、『銀河鉄道の夜』を元にした舞台を観る機会があったんです。そもそも宮沢賢治って、子どもの頃に触れたくらいで詳しく知らなかったんですよね。それで、その舞台を見て気づいたんです。なるほど、この人は自分と宇宙を同一視しているのかって。彼の思想は、自己犠牲が第一なんじゃなくて、自分と自分以外を区別しないという考え方に基づいている。仏教でいう無分別ってやつです。だから利己と利他の区別すらないんだって、彼の思想が少し腑に落ちたんですよね。