──アンドワンダーが見据えるものづくり
アウトドアの機能は時代に求められている

アウトドアにファッションという切り口をもたらした「アンドワンダー(TSIホールディングス)」。イッセイミヤケで経験を積んだ池内啓太と森美穂子が2011年に設立したブランドで、街着にもなるようなデザインを提案し、「山ではこうあるべき」と断じてきた業界の常識に風穴をあけた。軽量がキーワードの現代、アウトドアウェアは時代のデザインでもあると池内は語る。

©️and wander

シビアに切り詰めず、美しさを追求

ルイス・サリヴァンは「形態は機能に従う」と言った。無駄なものをなくして純粋に機能性を高めていけば、自ずと美しいものが生まれるというバウハウスの教えであるが、長らくアウトドアにおいてこれは叶わぬものだった。山での安全性を担保するために、美の概念はむしろ不要だったのだろう。ウェアの色は視認性の高さから、ブルー、グリーン、オレンジ、レディースならピンクと、判で押したような選択肢しかなかった。「アウトドアやスポーツ業界にみられるマッチョな感覚は、何か違うと思っていました」と池内啓太は振り返る。「立ち姿が美しい服、山に行ってまた街に戻る道中もボーダーレスに着ていられる、日常に着てもおかしくない服を提案できるのではないか」と、1年の準備期間を経て2011年、森美穂子とアンドワンダーを設立した。

海外のグローバルブランドは、標高7,000〜8,000mの山に登るプロの登山家をアンバサダーに迎え、彼らが使える最高峰の製品を提示しつつ、そのエッセンスをブランド全体に投影していることが多い。アンドワンダーは、プロフェッショナルがしのぎを削るような厳しい山は視野になく、日本で春・夏・秋に登ることができる程度の山々を考慮して機能性・安全性の基準を置いている。「登る山や環境によっては、そこまでシビアに機能に特化して切り詰めたデザインにしなくても、その余地をファッション性や着たときの美しさに変えることができるのではないかという思いがあります」。