電子廃棄物(E-waste)と呼ばれる家電製品や電子機器の廃棄物は、不法投棄されて土壌や海洋の汚染の原因になるなど、さまざまな弊害を招いている。きちんと処理できれば基板のメッキなどに含まれる金などの資源を回収して再利用できるが、現状では基盤と電子部品を分離するだけで、また基盤を収める筐体を分解するにも結構な手間とコストがかかってしまう。しかも、処理工場自体や廃棄物の運搬車両が排出する二酸化炭素が環境に及ぼす影響も無視できないという。
こうした問題を解決すべく新素材の開発に取り組んだ新興企業が英国のペンタフォームだ。同社の技術者たちは、水溶性と生分解性を併せ持つ樹脂「アクアフェード」をつくり出した。
アクアフェードは、食洗機用の洗剤タブレットの表面フォルムにヒントを得て、それと同種のポリビニル・アルコール(PVOH)をベースとしながらも、既存のインジェクションモールドや3Dプリンタで成型できるように調整し、ABS樹脂と同等の強度を持たせることに成功。さらに、表面にポリウレタンとシリコーンベースの防水コーティングを施している。
コーティングに傷をつけて普通の水の中に沈めると、アクアフェードは6〜8時間で完全に溶け、そのまま下水に流すことが可能となる。また、ポリウレタンとシリコーンは、通常、生分解性があると認識されていないが、ペンタフォームによれば十分に薄いコーティングであれば、下水処理過程のバクテリアの働きによって、水に溶けたアクアフェードとともに完全に無害な状態に生分解されるという。
アクアフェード製の電子基板と筐体を持つ製品は、小規模な施設でも適切な水槽さえあれば、電子部品と金属パーツなどを簡単に分離して再利用や再資源化が可能だ。電子廃棄物の削減に大きく貢献するものと期待されている。