都市と自然を行き来して見つめる、本当に必要なものとは?

ものづくりをする環境として自然に近い場所を選び、長野県・御代田に移住した熊野 亘。キャンプに魅せられ、今やライフワークにする川浪寛朗。消費を加速させる広告の世界と対極にある雪山に登ることで自己や仕事に向き合う上西祐理。三者三様のアウトドアライフを送る3人のデザイナーに、自然と対話することで見えてくるデザインの本質や、人と道具、人間と自然の関係性について、熊野が暮らす御代田の自然のなかで語り合ってもらった。

Photo by Sayuki Inoue

三者三様の自然との関わり方

──皆さんはアウトドアにどのようなきっかけで興味を持ったのでしょうか。

熊野 子どもの頃は家族でよく山登りに行っていて、ボーイスカウトに入っていたのでキャンプもしていました。その後、デザインを学ぶために渡ったフィンランドでは田舎に山小屋を持って2拠点生活している人が多くて、自然との距離が近い生活に憧れるようになりました。帰国後は10年くらい東京で生活していたのですが、ジャスパー・モリソンのスタジオを卒業するタイミングで長野県御代田町に拠点をつくりました。

川浪 羨ましい環境です。僕は父親がアウトドア好きだったので、子どもの頃からキャンプや渓流釣りによく行っていました。その後しばらくブランクがあったのですが、子どもができてから家族でキャンプに行くようになりました。当時は本当に多忙で、週末も仕事のことばかり考えてしまっていたのですが、キャンプでだけは心身がリセットできて。なかなか気にいる道具が見つからなかったこともあり、それなら自分たちでつくったり、使ってみて良かった道具を紹介したりしようと考えるようになり、今ではライフワークのようになっています。