プロジェクト「See by Your Ears」の集大成となる
展覧会「evala 現われる場 消滅する像」がICCで開催

《Inter-Scape (インタースケープ) 》2024年(新バージョン)
《-a》2021年(参考図版)、「2121年 Futures In-Sight」(21_21 DESIGN SIGHT、東京)展示風景、撮影:清水はるみ
美術館のホワイトキューブで展開してきた、音と光によるインスタレーション・シリーズ。evalaがこれまで世界中で拾い集めた音を使用し、空間的に作曲した最新鋭の立体音響による高密度な音と、可視光では得られない反応を見せるブラックライトの光によって構成される。

東京・西新宿のNTTインターコミュニケーション・センター [ICC]では、evalaの活動を紹介する展覧会「evala 現われる場 消滅する像」が2024年12月14日(土)から2025年3月9日(日)まで開催される。

新たな聴覚体験を生み出すプロジェクト「See by Your Ears」を国内外で展開するevala(エヴァラ)。その作品群は、ほとんど音だけで構成されているにも関わらず、鑑賞者の視覚的想像力をも喚起する。既存のフォーマットに依拠しない音響システムを駆使した独自の「空間的作曲」により、「耳で視る」作品が生まれる。

2013年、世界的なサウンド・アーティストである鈴木昭男とのコラボレーション作品として、「大きな耳をもったキツネ」をICC無響室で制作・発表。この作品は、2017年に公開された「See by Your Ears」とevalaのその後の活動の原点として位置づけられるものとなった。

《大きな耳をもったキツネ》2013–14年、撮影:木奥恵三
《大きな耳をもったキツネ》は、evalaの故郷である京都府北部の京丹後でのフィールド・レコーディング音源をもとに、録音場所の空間の残響と反射を擬似的につくり出し、そこに音響的変化を伴う音の運動を構成して作曲している。2013年から14年にかけて4作品が制作され、2017年には新たに《Our Muse》を制作。沖縄の御嶽(うたき)という特殊な反響をもった非日常空間でレコーディングした音源をもとに、まるで時空が変容するような高次元的音体験を構築している。

「美術」が視覚を中心にした表現領域=ビジュアル・アートであるのに対し、サウンド・アートは聴覚を中心にした表現領域である。また、サウンド・アートは、楽器で演奏される楽音ではなく、自然環境音を録音した素材などのさまざまな音を使用し、「聴くこと」自体を主題とするため、同じく聴覚による芸術表現である音楽とは区別される。

サウンド・アートはそれゆえ、聴くことから広がる知覚世界を提示する、という側面をもっている。とすれば、見ることにこだわる美術に対して、サウンド・アートはもうひとつの見ることを提示する表現であるといえるかもしれない。

今回の展覧会では、同氏の活動史において重要な作品を手がけるきっかけとなったICCを舞台に、「See by Your Ears」シリーズの新作を含めた集大成を披露する。精緻に構築された音響空間のなかで、聴くことと見ることが融け合う新たな知覚体験を楽しみたい。End

《Womb of the Ants》2018年(参考図版)、
国立アジア文化殿堂 [ACC](光州、韓国)での展示風景図版提供:国立アジア文化殿堂 [ACC]
今回は新作3作品を予定。ICCでもっとも大きな展示室であるギャラリーA全体を使用して、大型サウンド・インスタレーション最新作を展示するほか、3面スクリーンが常設された展示室であるギャラリーB6にて、新作のオーディオ・ビジュアル作品を展示する。また、研究開発中の生成技術を用いて、実験的なサウンド・インスタレーションを制作する。

《Sprout (スプラウト) 》2024年(新バージョン)
《Sprout》2024年(参考図版)、旧Bunkamura Studioでの展示風景、図版提供:Bunkamura、渋谷ファッションウイーク
小さなスピーカー群による“音の芽吹き”シリーズ。“発芽”という意味の《Sprout》には、“Sp out”というSpeaker outの略語も隠れている。同展では、シリーズ前作を大きく発展させ、ひとつずつ形状の異なるオリジナルスピーカーを大量に制作し、「菌」のような生命体が空間を覆う新作を構想している。

《Score of Presence》2019年、撮影:清水はるみ
“音の出る絵画”シリーズ。空間音響のデータを独自のアルゴリズムによって時空間を縮約/拡張し、視覚化した6つのビジュアルイメージが描かれた絵画で、特殊プリントと平面パネルスピーカー技術の組み合わせによって、絵画そのものから音が発せられる。一見すると、鑑賞する角度によって鮮やかに色彩が変化する6枚の絵画だが、そこには見えない音の作品が重なる。

evala(音楽家、サウンド・アーティスト)
Photo by Susumu Kunisaki

evala 現われる場 消滅する像

会期
2024年12月14日(土)~2025年3月9日(日)
開館時間
11:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日
毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は翌日)、年末年始(12月28日(土)~1月3日(金))、ビル保守点検日(2月9日(日))
会場
NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] ギャラリーA,B(東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階)
詳細
https://www.ntticc.or.jp/ja/press/2024/press-evala-emerging-site-disappearing-sight/