ひとつのピースから
#2 Radio in a Bag (1981) ダニエル・ウェイル

Illustration by Takeo Chikatsu

最近街を歩いていると、PVC(ポリ塩化ビニル)製の透明のカバンやポーチに好きなアイドルの写真やキャラクターの画像、グッズなどを入れて持ち歩いている人をよく見かける。推しをポータブルな存在に変換して、一緒に行動している様子はとても楽しそうだ。そんな光景を見ていて思い出されるのが、今回のデザインピース、ダニエル・ウェイルによる「Radio in a Bag」である。イギリスのデザイン史においては、しばしば1980年代のラディカルなデザインの代表例として挙げられるプロダクトだ。

1953年にアルゼンチンで生まれたウェイルは、ブエノスアイレス大学で建築を学んだ後、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでインダストリアルデザインの修士号を取得。80年代からオブジェやプロダクトを自主制作していたが、92年に国際的なデザインコンサルタント会社ペンタグラムにパートナーとして参加。ユナイテッド航空の客室インテリアやアメニティ、カトラリーといった総合的なデザインに加え、ペットショップボーイズのCDジャケットデザイン、スウォッチのアイロニーコレクションのパッケージなどで知られる。