NEWS | 建築
2024.10.31 11:00
建築家 マー・ヤンソンが率いるMAD Architectsは、コロラド州デンバーのリバー・ノース・アート・ディストリクト(River North Art District)で設計を手がけた16階建ての建築「One River North」を発表した。
デンバーはロッキー山脈のふもとに位置し、近場でアウトドアが楽しめる自然豊かな場所。その中心部である、ノース・アート・ディストリクトは「RiNo」の愛称で親しまれ、いたるところにウォールアートが描かれた活気あふれるエリアだ。かつて倉庫や工場だった建物をアートギャラリーやライブハウスなどに改装し、地区全体で地元のアーティストやクリエイターを支援している。
そこで、MAD Architectsは、現代の都会の暮らしを見つめ直すべく、建築に自然を組み込み、没入型の体験を提案。居住者どうしのつながりや自然との結びつきを生み出し、新たにコミュニティを形成することを目指した。
こうして誕生した「One River North」は、自然と文化が融合したデンバーにふさわしく、ガラス張りのファサードに亀裂が垂直に走った大胆なデザインが施された。自然の浸食が生み出したような壁面は、ビルのすっきりとした幾何学的なファサードとは対照的に柔らかなカーブを描いている。居住者に「ビルの中にいながら自然の景観に浸り、渓谷のなかに住んでいるかのような気分」を味わってほしいとマー・ヤンソンは語る。
1階に店舗スペースがあり、2階より上は187戸の住居で構成。6階から9階にかけては、コロラドの丘陵と渓谷にインスパイアされた、滝の音が聴こえるアメニティスペースを設けた。高密度の住居を建てるという都市のニーズに応えるとともに、安全に散策できるエリアや、フィットネス施設を完備することで、住民の心身の健康にも配慮している。
テーブルやソファを配置したテラスからは街の景色が一望でき、地域の自然環境や四季に合わせて変化する植栽も楽しめる。この渓谷を登りきると現れるのが、険しい高山をイメージした屋上テラス。プールやスパ、庭園が配置され、目の前に見えるロッキー山脈の自然の一体感が味わえる空間になっている。