未来のショーケース「SXSW」から生成した都市像
「技術との距離感」が街に幸福をもたらす

宮川が画像生成AIミッドジャーニーのビジネスアカウントで生成した「ニューログリッド都市」のイメージ。バーチャルツインでルートプランニングされるeVTOLが上空を行き交う。

テクノロジーの発達が都市の発展を促し、そこで生活を営む人々の幸福度を上げる。人々が集まって暮らし始めた有史以来、都市開発と技術革新は密接な関係だった。だが、幸せをもたらすはずの最新技術が、近年は生活のしにくさ、生き生きとした光景の喪失につながる例もある。そこに何が欠けているのか。未来予報社のフューチャリストでSXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)の日本窓口も務める宮川麻衣子氏と考えた。

そこにGAFAMの驕りはなかったか。2020年5月、アルファベット傘下のグーグルは、カナダ・トロントで足かけ3年にわたり取り組んだスマートシティ「サイドウォークラボ」の建設を白紙撤回した。ウォーターフロントの再開発事業としてトロント市が選定した民間プロジェクトだったが、住民データを収集して街づくりに活用する方針に人権団体が猛反発。地元の著名IT企業家が「監視資本主義における植民地化実験」とまでこき下ろした。

ここまでの騒動にならずとも、東京では民間デベロッパー主導の都市開発に首を傾げたいシーンは多い。竣工時期がずれる競合ビルが立ち並び、動線やデザインがチグハグになる。かつてのストリートを物件内に囲い込み、街並みと街の表情が消える。経済効果を計算する際には、自然や文化の評価額をゼロにする。数千億、数兆円をかけてでき上がる貧相な街に失望した読者も多いはずだ。

挫折したスマートシティと近年の東京における都市開発。そのいずれにも見当たらず、かつて築かれた都市に存在したものとは、街の特徴がひと言でわかる「大胆なコンセプト」ではないか。