DIGRAPHが追求する、視覚表現の未来

「SPUR series」プロッターに装着された絵筆がブルーに塗られた紙の上を通ることで、雪原をスキーで滑り降りた後のシュプールのような美しい造形が浮かび上がる。今号のために制作したオリジナルデザイン。

DIGRAPH(ディグラフ)は、デザイナーでグラフィックリサーチャー(視覚表現研究者)の深地宏昌と、プログラマーでアルゴリズミックデザイナーの堀川淳一郎が2023年に結成したクリエイティブスタジオ。彼らはデジタルテクノロジーを駆使し、多様な領域を横断しながらグラフィック表現の新たな可能性を探求している。彼らが目指すものとは何か。

視覚表現を研究するふたりが出会った

DIGRAPHのひとり、深地宏昌は、クライアントワークと並行して、Plotter Drawing(プロッタードローイング)という独自の手法による、グラフィック表現の可能性を探る作品制作を行っている。

プロッターとは、コンピュータで制作した線データを出力するデジタル工作機器である。京都工芸繊維大学大学院在学中にこの機器を知り、筆、ペン、鉛筆など、さまざまな筆記具を装着できる治具を自作し、修了制作をつくったのが始まりだ。「紙や筆記具の種類、筆圧、速度、気温や湿度なども影響し、かすれやにじみなどが偶発的に生まれ、人の手やコンピュータで描いたものとは異なる表現の可能性を感じました」と深地は語り、現在も実験を重ねながら美しい表現を探究している。

一方の堀川淳一郎は、アメリカのコロンビア大学建築学AADの修士を取得し、建築の学びが出発点にある。現在は建築やITの分野でVR・ARのアプリやゲーム、ウェブシステムデザイン、インタラクティブメディアなどの開発に携わる。また、コンピュータのアルゴリズム(数理的な計算手法)を使って、幾何学形態や自然の生態が変化する過程をシミュレーションするアルゴリズミックデザインの研究にも取り組み、これまでに細胞や泡、植物、メッシュ、パイプなどを題材に制作したものをYouTubeに上げている。