歴史情緒ある長崎に 築100年をこえる
日本家屋を再生したオーベルジュ「陶々亭」が開業

2022年9月に西九州新幹線が開通し、2024年10月にはサッカースタジアムを中心とした複合施設である「長崎スタジアムシティ」の開業を控えている長崎。注目が集まりつつあるこの地に、株式会社マツダモビリティ佐賀は、築100年を超える日本家屋をリノベーションしたオーベルジュ「陶々亭」をグランドオープンした。

長崎は、南蛮貿易や唐人貿易など、古くから諸外国との交流が盛んで、「和華蘭文化」が根づいている。「和」は日本、「華」は中国、「蘭」はオランダをはじめとする西洋からなる、長崎独自の文化だ。ちゃんぽんやカステラといった食文化はもちろん、江戸時代に貿易のため来航した中国人の居住地があった唐人屋敷跡や、グラバー園やオランダ坂周辺をはじめとする洋風建築など、それぞれの文化や伝統が混じり合った、風情ある独特な街並みが広がっている。

レストラン「HAJIME」

今回オープンした「陶々亭」は、元々貿易商を営む青田家の住宅として1908年に建てられて、その後1949年頃からは「中華料亭 陶々亭」として使用されてきた建物を、宿泊施設とレストランにリノベーションしたもの。2020年に閉業するまで長きにわたって、街の人びとに愛されてきた「陶々亭」を守るべく、さまざまな交流の拠点であった長崎の賑わいと文化の継承を目的とし、オーベルジュとして生まれ変わることとなった。

施設全体の改修は、古民家の再生に精通する地元長崎の建設会社「浜松建設」が手掛け、リノベーションの監修やインテリア、グラフィックは、富山と東京を拠点とする「51%五割一分(ごわりいちぶ)」が担当した。客室は「主屋」「離れ」「蔵」の3部屋を用意。歴史ある建築にモダンな家具を融合させた設えは、落ち着きをもたらすくつろぎ空間となっている。

宴会場として使用されていた「主屋」。幾何学模様が施された窓枠の意匠や、窓の一部に残っている、現在では入手困難なビードロが歴史を感じさせる。

別棟の「離れ」は、吹き抜けのあるメゾネットタイプで、1階がリビングスペース、2階が寝室。リビングスペースの椅子はマルニ木工・深澤直人デザインの「HIROSHIMA」ラウンジチェア。

「蔵」には当時のレンガが残された、隠れ家のような雰囲気。3部屋のうち、唯一檜風呂が備えつけられ、部屋全体に自然の香りを感じることができる。

内装は、元の素材をいかしたリノベーションを施された。また、それぞれの空間には、ハタノワタルや安齋賢太らの現代の工芸やアート作品も飾られている。

敷地内の倉庫に眠っていた廃材を天板や壁面に使用することで、歴史ある空間とモダンな家具が違和感なく馴染み、一体感がもたらされている。

「離れ」にある安齋賢太の作品。

また、宿泊者以外も利用できる館内のレストラン「HAJIME」も客室と同様モダン家具により、上質な空間が演出されている。長崎市内唯一の薪窯によるピッツァをはじめ、長崎和牛、長崎港で獲れた地魚、地元農家の野菜など、地産地消にこだわった、オーセンティックなイタリアンをシェフ自らが選定した長崎の波佐見焼で提供している。

ナポリで修行したシェフによると、長崎の急峻な地形はイタリアのアマルフィ地方を想起させるという。「イタリアにもし長崎があったら」というイメージを描きながら、地元食材を使ったメニューを考案しているそうだ。

個室の円卓は中華料亭時代から引き継がれたもの。長崎は円卓を囲み食事をする、卓袱(しっぽく)料理と呼ばれる宴会料理の発祥の地でもある。奥の掛け軸は、ハタノワタルが「陶々亭」のために描き下ろした。

また、マツダモビリティ佐賀のグループ会社であるタクシー会社「ブルーキャブ」との提携による、長崎空港から陶々亭までの送迎プランも用意。アーティスト 長場 雄が手がけたラッピングタクシーが来客者を迎える。

古い建物が多く残された長崎の中でも100年を超える家屋は珍しい。歴史ある和風建築と洗練されたインテリアが融合した「陶々亭」で、異国情緒あふれる伝統的な街・長崎での滞在を楽しんでみてはいかがだろうか。End

陶々亭

グランドオープン日
2024年9月1日(日)
住所
長崎県長崎市十人町9-4
宿泊
主屋 OMOYA 60㎡(定員4名)
離れ HANARE 50㎡(定員2名)
蔵 KURA 40㎡(定員2名)
詳細
https://www.tototei.jp