アルスエレクトロニカと共同開催する
千葉県松戸市の芸術祭「科学と芸術の丘 2024」

千葉県松戸市では、市民が中心となってつくり上げる芸術祭「科学と芸術の丘 2024」が、2024年10月25日(金)から10月27日(日)まで市内各所で開催される。オーストリア・リンツに拠点を置く世界的なメディアアートの文化機関「アルスエレクトロニカ」の協力を得て、2018年より毎年開催しており、今年で7回目となるイベントだ。

松戸市は、創造性豊かな「クリエイティブ・シティまつど」の実現を目指しており、クリエイターやアーティストが活躍できるまちづくりに向けて、多様な取り組みを展開。その一環となる「科学と芸術の丘」は、科学・芸術・自然をつなぐ国際フェスティバルであり、市民主体で実行委員会を組織し、企画・運営を行っている。

今回は、「何かをつくり出すことを『アート』というのであれば、街に暮らす私たち誰しもが『アーティスト』であると言えるのではないか?」という問いから出発し、テーマを「City of Artists 〜つくるをひらく〜」に決定。能動的に「つくる」ことで得られる実感や喜びを体験できる作品展示に加え、参加型企画を展開する。

メイン会場となる水戸藩主の別邸「戸定邸(とじょうてい)」では、アルスエレクトロニカとともにキュレーションした、国内外のアーティストによる多彩な作品が展示される。一方、市内各所に設けられたサテライト会場では、参加アーティストが同展のために作品を制作するほか、過去に手がけた作品を再構成して披露する。

【Ars Electronica Selection】 Diane Cescutti《Nosukaay》

「Nosukaay」は、西アフリカの織機とコンピューターを組み合わせ、織物機械に改造した「コンピューター」をつくる初めての試みである。西アフリカに住む民族マンジャクが用いる織機の構造を模倣し、伝統的な織機のフレームの代わりにプラスチックの外殻を取り除いた2枚のスクリーンが設置されている。機械の神である「Nosukaay」は、コンピューター、マンジャクの織物の知識、数学の間にあるつながりを強調するオルタナティブな歴史についての物語を語る。この物語は、セネガルで入手したテキストや映像資料、3D画像を組み合わせて構成されている。また「Nosukaay」は、インタラクティブな作品でもある。セネガルの首都ダカールの工房では作者のDiane Cescuttiと織物職人のEdimar Rosaが両手で織った腰布をキーボードとして使用し、鑑賞者はこのキーボードを用いて物語にアクセスして探求することができる。
©︎Blanche Lafarge

Diane Cescutti ©︎Ayomide Tejuoso

【Ars Electronica Selection】 Sasha Stiles《CURSIVE BINARY》ほか

アセミック・ライティング(特定の意味を持たない文字を書くこと)とコンピュータサイエンスに影響を受けた「CURSIVE BINARY」は、人間の限界を超えた理解を目指して提案された言語であり、人間から機械への翻訳の機能的な手段であると同時に、人間と機械の協働のプロセス、特質、成果が絡み合う詩的なメタファーでもある。この書記体系は、Sasha Stiles自身の人間の手書き文字と、機械言語の0と1を融合させて形成されており、自由に流れるような筆記体の形と、再帰的なコードパターンを対比させ、古いものと新しいもの、有機的なものと自動化されたもの、仮想と生々しいもの、肉体とノードという視覚的な二項対立を表現している。

Sasha Stiles

【Ars Electronica Selection】 Peter Haider, Denise Hirtenfelder, Nicolas Naveau and Maria Pfeifer(Ars Electronica Futurelab)《Bridge 2040》

「Bridge 2040」は、未来への架け橋となることを目指す誰でも短時間で楽しめるカードゲームだ。8歳から14歳の子どもたちと65歳以上の高齢者が一緒に未来の課題について考え、語り合うことを目指している。プレイヤーは、2040年に生きるさまざまなキャラクターの創造的なストーリーを考え、語り合う。「科学と芸術の丘」では、あらゆる世代や背景の人々がプレイヤーとして参加することを想定。カードに描かれたトレンドや問い、アート作品をヒントに、社会、経済、技術、都市計画、気候変動、健康などのテーマを探求する。フェスティバル期間中は、製作者によるガイド付きのワークショップセッションも開催される。
©️tom mesic

Peter Haider, Denise Hirtenfelder, Nicolas Naveau and Maria Pfeifer(Ars Electronica Futurelab)
©️Bernadette Geißler

Sareena Sattapon《Balen(ciaga) I belong》

現代の不平等な社会においては、違う層にも人々が存在していることに気づきにくい。 高層タワーに住んでいる富裕層は、それを建てた労働者/移民には気がつかない。我々は、社会は均質ではなく、多くの層にいる人々によって動かされているという真実を無視しているのだ。

Sareena Sattapon

金箱淳一+首藤圭介《the blink stone》

敷きつめられた石の上を歩くたびに、足元でひとつひとつの石が瞬きのような光を放つ。鑑賞者が作品の上を歩くことで、石が内包している膨大な記憶の時間軸のなかでは瞬きのように過ぎ去る私たちの生の瞬間と、連綿と続くこの世界が今、この瞬間にも確かに自分と繋がっている証として、そっと光を放つ。この作品は、ライフラインに依存しないメディアアートの可能性を提示するものだ。たとえ人々に忘れ去られる存在となっても、踏まれればいつでも光る作品として在り続けるだろう。

金箱淳一 ©️Yuki Moriya

首藤圭介

そのほか、スピードが出ないミニ四駆「遅四駆」をオフロード仕様にして自然のなかを走らせる、戸定が丘歴史公園内の昆虫たちを探し出す探検隊を結成する、といったワークショップを開催。参加アーティストたちによる、科学・芸術・自然について考えるアーティストトークも行われる。End

遅四グランプリ実行委員会《ワイルド遅四駆をつくって自然の中を走らせよう!》
日時:10月26日(土)、10月27日(日)ともに11:00〜14:30(昼休憩あり)、15:00より丘のマルシェにてお披露目
会場:松雲亭
参加費:2,000円 ※「科学と芸術の丘」エキシビジョンのチケットが必要。
定員:各回20名程度
対象:全年齢 ※10歳未満の者は、保護者と一緒に参加すること。

千葉大学大学院園芸学研究院 応用昆虫学 野村昌史研究室《昆虫観察アウトドアワークショップ「科学と芸術の丘探検隊」》
日時:10月26日(土)、10月27日(日)ともに①10:30〜12:00/②13:30〜15:00
会場:戸定歴史が丘公園
参加費:500円 ※「科学と芸術の丘」エキシビジョンのチケットが必要。
定員:各回20名程度
対象:小学生以上 ※小学生以下の者は、保護者と一緒に参加すること。

科学と芸術の丘 2024

会期
2024年10月25日(金)・26日(土) 10:00〜16:30
2024年10月27日(日) 10:00〜16:00
会場
千葉県松戸市(戸定邸、松雲亭、戸定が丘歴史公園、松戸市内各所)
出展アーティスト
Diane Cescutti、Sasha Stiles、Peter Haider/Denise Hirtenfelder/Nicolas Naveau/Maria Pfeifer (Ars Electronica Futurelab)、Sareena Sattapon、金箱淳一+首藤圭介
トーク登壇者
本郷谷健次(予定)、清水陽子、金箱淳一、Sareena Sattapon、Denise Hirtenfelder、Sasha Stiles、Diane Cescutti、関口智子
ワークショップ講師
遅四グランプリ実行委員会、千葉大学大学院園芸学研究院 応用昆虫学 野村昌史研究室
チケット
9月下旬公開予定のPeatixより参加チケットを購入できるほか、当日、戸定邸入口前【総合受付】にて受け付ける。なお、トーク・ワークショップは、チケット購入後に案内するPeatixのURLにて10月1日(火)より事前予約を開始する。
※トーク、ワークショップなどへの参加は別途予約制
詳細
https://science-art-matsudo.net/