「源氏香の図」をモチーフにした
松栄堂から鋳造香炉「香乃図」が登場

Photos by 大沼ショージ

東京を拠点とするプロダクトデザイナー 阿部憲嗣は、京都市中京区にある創業約300年の香老舗 松栄堂とのコラボレーションで、日本の伝統的な文化のひとつ、香道の世界で用いられる「源氏香の図」をモチーフにした鋳造香炉「香乃図」を制作した。

源氏香とは、香木の香りを聞き分ける遊び「組香(くみこう)」のひとつ。5種類の香を5包ずつつくり、できあがった25包を混ぜ合わせ、そこから5包を取り出し焚いて香らせる。5包の香りを聞いた客は5本の縦線を引き、同じ香りと思うものの線の上部を横線でつなぐ、というものだ。

そして、この線の組み合わせから生まれる52パターンを、紫式部による古典文学「源氏物語」五十四帖にちなんで命名したものが源氏香の図である。今回制作した「香乃図」では、そのうちの数種類をお香立ての模様として採用した。松栄堂で製造されている、スティックタイプ、コーンタイプ、渦巻きタイプのお香はいずれも使用できる。

複雑な源氏香模様の形状は、富山県高岡市の鋳物メーカー 中村製作所が担当。素材にはブロンズを使用し、同社のロストワックス精密鋳造の技術を用いて一体成形されている。End

阿部憲嗣