最大時速1,000kmで2分おきに発着可。
航空機と鉄道の利点を融合したFluxJet

2013年に、テスラなど複数の先端企業を所有するイーロン・マスクは、乗客を乗せたポッドがほぼ真空のチューブ内をリニアモーターを用いて高速かつ効率的に移動する、次世代の超高速輸送システム「ハイパーループ」構想を発表した。複数の企業が、その実用化に向けた開発やテストを行っているが、これまで実際の公共交通機関として建設されたハイパーループシステムは存在しなかった。

しかし、ついにその状況が変わろうとしている。カナダのトロントベースのTranspodが5億5,000万ドルの資金調達を完了し、同社のハイパーループシステムであるFluxJetを利用して、カナダのカルガリーとエドモントンを結ぶ高速度チューブの予備工事に着手したのだ。駅を含む建設工事の完了は2027年に予定され、完成すると両都市間約280kmを45分で移動でき通勤圏内となることから、大きな経済効果が期待されている。

FluxJetの大きな特徴は、ポッド(車体)上部のマグネットを利用して浮上し、底部のマグネットで推進力を得る構造と、プラズマアークを利用して非接触で給電する仕組みにある。また、高架の上にチューブが敷設されるが、支柱を既存のフリーウェイの上に建設することで鉄道よりも建設費用を抑えられることもメリットだ。

全長25mのポッド1基あたりの乗車定員は54名+ホイールチェア2台となっているが、2分間隔で発着可能なため、1時間あたりでは最大1,680名の輸送キャパシティがあり、旅客機よりも利便性が高い乗り物となる。また、チューブ内を走ることから、非常時にも脱出しやすいように乗降口はポッドの前端と後端にあり、その点でもユニークなデザインとなっている。

ちなみにTranspodは、2024年内にフランスでのテストトラックの建設を予定しているほか、テキサス州、オーストラリア、アラブ首長国連邦でも計画が進行中であり、FluxJetの実用化に一層の拍車がかかりそうだ。End