NASA、災害対応の支援システムを発表
ブラジルで発生した洪水被害のデータを提供

ブラジルの南部に位置するリオグランデ・ド・スル州では、今年5月の大雨による影響で大規模な洪水や土砂崩れが発生。多くの住民が被災し、甚大な被害をもたらした。

この事態に即座に対応したのが、アメリカ航空宇宙局(NASA)である。米地域別統合軍のひとつで、中南米とキューバを含む西インド諸島を担当地域とする「アメリカ南方軍」の当局者が地球観測データを求めてNASAに支援を要請。これを受けてNASAは、現地の救助隊が災害の規模を把握できるように、同地域の画像とデータの提供を行った。

NASAは、米メリーランド州にあるゴダード宇宙飛行センターからの情報をもとに、停電していると思われる場所の地図を作成。商用小型衛星データ取得プログラムから得た高解像度光学データも活用して、4,000カ所以上の地滑り現場の地図をつくり上げた。また、衛星データを使用した洪水範囲の地図や、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士が撮影した洪水の画像も提供した。

これらの対応と経験をもとに、NASAは米国内外で発生した災害に対応するための新たなシステムを構築し、6月に発表した。基盤となるのは、NASAが誇るサイエンス、テクノロジー、データ、専門知識に関する最先端の情報の数々だ。これらを緊急事態管理者に対していち早く提供し、災害対応に役立ててもらうねらいである。

NASA地球科学部門のディレクターを務めるカレン・セント・ジャーメイン(Karen St. Germain)は、「極端現象に晒される人が増えており、気候変動による災害リスクは増大しています」と述べる。さらに、「世界人口の10%に相当する人が、特に高潮、高波、津波、浸食などの被害を受けやすい低地の沿岸地域に住んでいます。地球科学の分野をベースとしたNASAの災害対応支援システムでは、災害への効率的な対応と人命救助につながるように、即座に使える方法や手段を用意しています」と語った。End