メゾン・エ・オブジェ30周年:「宇宙」をテーマに開催


SAFI(フランス工芸家組合とRXフランスの系列会社)主催による「メゾン・エ・オブジェ」は、年に2回開催される国際的な展示会であり、1994年にパリで創設されてから、デザイン、デコレーション、ライフスタイル分野の国際的なコミュニティを牽引してきた。特に9月展はパリ・デザイン・ウィークと同時期に開催されることで、パリの街に創造的な活気をもたらしている。

2024年9月に開催予定のメゾン・エ・オブジェおよびパリ・デザイン・ウィークについて紹介する。

インスピレーションテーマ:「テラ・コスモス」

メゾン・エ・オブジェと、クリエイティブ戦略に特化したコンサルティング企業のペクレール・パリ社が提案する、インスピレーションテーマ。テクノロジーと自然との調和にスポットを当てた前回の「テック・エデン」に続き、9月展は、それをさらに深めるべく「TERRA COSMOS (テラ・コスモス)」を掲げる。

Acorn Vase, par ILEXS STUDIO ©️Ilex Studio, London 2023

今や実現可能なものとなった宇宙旅行、そして未来予測にテクノロジーが追いつき、私たちのライフスタイルは根本から大きく変化しようとしている。人類初の月面着陸から55年ほど経った今、科学の新たな成功が、再び私たちを魅了し、明るい未来とも言える宇宙と結びついたイマジネーションを掻き立てている。

そうしたテーマのなか、ぺクレール・パリ社のトレンド予測者、デザイナーたちは、革新的な素材を用いた空間デザインや、極限環境での没入型体験など提案、展示する。それらの素材は、ときにブルータリズム的な粗さを持ち、またときに洗練された姿を見せる。虹色に輝く光沢や透明感は、天体の鉱物的な表面を想起させると同時に、無限に広がる星空も連想させるかもしれない。

ANGA ©️DR

さらに、テキサス州の荒涼とした風景に佇む「エル・コスミコ」ホテルのように、ホスピタリティ産業においても「テラ・コスモス」の概念を見ることができる。ここでは、地球と宇宙の境界線上にいるかのような唯一無二の体験が提供されるという。

デザイナー・オブ・ザ・イヤー 2024

メゾン・エ・オブジェ2024年9月展のデザイナー・オブ・ザ・イヤーには、ベルギー出身のインテリアデザイナー/アーティスト、Lionel Jadot(リオネル・ジャド)が選ばれた。

ブリュッセルにある家具工房で育ち、6代にわたり家族が家具を製作してきた背景を持つジャドは、さまざまな職人や建築家たちからアートやデザインについて学んだという。その時々で得られる原材料の違いが生かされ、特にリサイクル技術に精通する彼の作品はアートであれ、コレクティブルなデザインであれ、独創性に富んでいる。また、自らのアトリエに招いた30人のデザイナーとともに、魅力的なデザインを生み出している。

Lionel Jadot             
©Tim Van De Velde

▲Lionel Jadotによる空間デザイン「Mix Brussels」。 
©Mireille Robbaert

会期中、ジャドはホスピタリティの空間デザインをテーマにしたプロジェクト「What’s New? In Hospitality」を公開する予定。

Lionel Jadotのメゾン・エ・オブジェでのプロジェクトのイラスト。

ライジング・タレント・アワード:北欧

各シーズン、メゾン・エ・オブジェが特定の地域の若手クリエイターに焦点を当て、審査員により選出された6組の有望な若手デザイナー、およびライジング・タレント・アワード・クラフト賞1組が作品を発表・展示する。

2024年9月展のライジング・タレント・アワードの対象地域は北欧。スウェーデン、デンマーク、ノルウェーのスカンジナビア諸国、フィンランド、アイスランドで活躍している35歳未満かつスタジオ設立から5年未満のデザイナーたちから受賞者を選出した。

ライジング・タレント・アワード2024クラフト賞受賞者のMalin Ida Eriksson。         
©️Lisa Hallgren

Malin Ida Erikssonの作品。          
©️Lisa Hallgren

「北欧諸国は北極圏特有の時間感覚や、素材を加工しすぎないという特徴的な自然素材の扱い方を持っています。特に若い世代は、量産向けのデザインではなく、アートとデザインの境界線上に位置するクラフトやコレクティブルデザインに近い、新しいデザイン表現を主張しています。」とライジング・タレント・アワードの責任者、Dereen O’Sullivanは述べる。

ライジング・タレント・アワード2024の受賞者Antrei Hartikeinenによる作品「MELT objects」。
©Sanni Riihimäki

ライジング・タレント・アワード2024の受賞者Lab La Blaによる作品。 
©D.R.

パリ・デザイン・ウィーク 2024

第14回となる「パリ・デザイン・ウィーク2024」は、9月5日から14日までパリ市内で開催。左岸のサン・ジェルマン・デ・プレ、右岸のオペラ・コンコルド・エトワール地区、マレ・バスティーユ・レピュブリック地区、そしてパレ・ロワイヤル・ヴィクトワール広場・ピガール地区など、パリの特徴ある地域それぞれで、独自のデザインや芸術表現が展開される。大御所から新進気鋭まで、幅広いクリエイターたちにとって重要な舞台となっているパリ・デザイン・ウィークを通じて、パリの創造的な活気と多様性を体験できる。

©D.R.

例えば、「デザイン・シュル・クール(中庭のデザイン)」は、デザイナーたちに世界的に有名な歴史的建造物の中庭や庭園を活用する機会を提供し、クラシカルな建築と現代デザインの間に独特な対話を生み出している。「パリ・デザインウィーク・ファクトリー」は将来の才能を発掘することを目指し、4つの展示会場で、若手出展者が展示する。そのほか、学校、協会などの共同ワークショップも現代のモノづくり体験を提供している。

ロンドンを拠点とするデザイナー、ポール・コックセッジが手がけるインスタレーション。
© Paul Cocksedge

Uchronia x L’Hotel de la Marine
© D.R.

30周年を迎える節目に、メゾン・エ・オブジェは「テラ・コスモス」という壮大な概念を打ち出した。この概念は地球と宇宙の融合を示唆し、デザインの領域に斬新な視点をもたらしたいという期待が込められている。End

メゾン・エ・オブジェ・パリ 2024年9月展

会期
2024年9月5日(木)〜9日(月)
会場
パリ・ノール・ヴィルパント見本市会場
詳細
https://www.maison-objet.com/en/paris
問い合わせ
メゾン・エ・オブジェ日本総代理店/株式会社デアイ
E-mail: mo-japon@deai-co.com