若手クリエイターの創造性を育むスぺース
マクセル「クセがあるスタジオ」

photos by 足袋井竜也

乾電池や記録メディアなどの電気機器メーカー マクセルは、京都府大山崎町にて2023年10月に完成した「アート&テクノロジー・ヴィレッジ京都(ATVK)」内に、「クセがあるスタジオ」を2024年4月にオープンした。アワードやトークイベント、ワークショップなどを開催する、次世代を担う若手クリエイターのためのスぺースだ。

同施設を設計したのは、建築家の水上和哉が率いる大阪・茨木の建築設計事務所 kvalito。「回遊性」と「中心性」をテーマとする100㎡ほどの小さな建築は、中央に「九間(ここのま)」の大きさのホールをもち、回廊がめぐらされている。ホールと回廊の間に建具として設えたワイヤーメッシュの展示壁は、状況や用途に応じて移動可能だ。

また、ロゴマークは「建築の回廊形式および傾きのある配置プラン」「マルのなかにクセがある(マクセル)」のコンセプトを反映するカタチとしてグラフィックデザイナー 一ノ瀬雄太が手がけた。

このスタジオに合わせて、マクセルのロゴマークの形状を解釈した展示台兼ワークショップテーブル「TABLE_MX」を制作。テーブル中央部の楕円の天板を取り外せば、ワークショップ時に使える円卓や、空間に動きを与える波打つ展示台として使える。

開放的な展示空間を実現するため、周囲には1.8mの庇を設置。四隅はハイサイドライト(高窓)の立ち上りを利用して、庇をワイヤーで上部に吊り上げる構造とした。ハイサイドライトの斜材は、ワイヤーの反力を受ける構造材であるとともに、中央の5.4mのスパンを支えるトラス梁としても機能する。

可動式の展示壁やテーブル、外周部を取り巻くワイヤーなど、建築を構成するさまざまな要素に複数の意味をもたせ、それらを「混ぜ合わせる」ことで生まれた「クセがあるスタジオ」。次世代を担うクリエイターたちが集うこの空間では、彼らの多様な作品と「クセ」によるシナジーが期待される。End