「サーペンタイン・パビリオン」が公開
韓国の建築家 チョ・ミンスクによる「Archipelagic Void」

© Mass Studies Photo: Iwan Baan Courtesy: Serpentine

ロンドンにあるサーペンタイン・ギャラリー(Serpentine Gallery)では、ギャラリーに隣接する庭園にて毎年夏季に登場する仮設の休憩施設「サーペンタイン・パビリオン」が2024年10月27日(日)まで公開中。23回目となる今年は、ソウルを拠点とする建築家 チョ・ミンスクが率いる建築設計事務所 Mass Studiesが「Archipelagic Void(アーキパラジク・ヴォイド)」と題する構造物を手がけた。

© Mass Studies Photo: Iwan Baan Courtesy: Serpentine

2000年にザハ・ハディド設計の建築物とともに始まった「サーペンタイン・パビリオン」。以来、国際的に著名、あるいは新進気鋭の建築家が、休憩施設兼カフェであり、アートプログラムのプラットフォームとしても機能するパビリオンの設計を担当してきた。

今回のチョ・ミンスクによる「Archipelagic Void」は、中央にある円形の広場と、その周囲に星形に配置された5つの「島」のような構造物、その中間にある5つのオープンスペースで構成される。中央部は、韓国語で「広場」や「中庭」を意味する「マダン」のようなものとして、個人の日常の営みからより大きなイベントまで、さまざまな活動を行える空間として機能する。

© Mass Studies Photo: Iwan Baan Courtesy: Serpentine

© Mass Studies Photo: Iwan Baan Courtesy: Serpentine

© Mass Studies Photo: Iwan Baan Courtesy: Serpentine

このパビリオンの多面性を象徴する周囲の構造物は、それぞれに名前があり、異なる目的を備えている。メインエントランスとなる「ギャラリー」は、訪れた人を出迎えるとともに、サーペンタインサウスギャラリーのアート活動を外へと拡張する役割を担う。

もっとも大きな「オーディトリアム」はパフォーマンスなどを行うエリアとして機能し、パビリオンの北側にある「ライブラリー」には寄贈された書籍が置かれる。「ティーハウス」は、ティールームとして1934年に建てられたサウスギャラリーを称える場所であり、ネットで覆われたピラミッド型の「プレイタワー」は人々が交流できるオープンな空間である。それぞれの施設や空間は、周囲の庭園やアクティビティともシームレスにつながる可能性を秘めている。

© Mass Studies Photo: Iwan Baan Courtesy: Serpentine

© Mass Studies Photo: Iwan Baan Courtesy: Serpentine

チョ・ミンスクはパビリオンについて、「サーペンタイン・ギャラリーでは、偉大な建築家たちがこれまでに20以上のパビリオンを建てています。われわれは、これまでにないアプローチとして、敷地を『白紙委任状』と見なすのではなく、周りにある既存の要素を取り入れることにしました。それは、構造物というこれまでのパビリオンのあり方から離れ、中央の何もない空間に新たな可能性や物語の誕生を促すという、建築上の視点のシフトなのです」と解説している。End

Minsuk Cho, Mass Studies © Photo by Mok Jungwook