いのちの記憶を継承し、市民の憩いの場所となる
熊本県益城町の「震災記念公園」

Photography:Tomooki Kengaku

2016年に発生した熊本地震で被害を受けた、熊本県の益城町役場前に「益城町震災記念公園」がオープンした。熊本地震を後世に伝え、いのちの記憶を継承する場所と、市民が集い、憩う場所として、「非日常」と「日常」の2つの目的をもって新設された。設計は、公共空間の景観デザインをメインとする東京の設計事務所 Tetor(テトー)と熊本市の風景工房が担当。モニュメントはプロダクトデザイナーの小宮山 洋が手がけた。

Photography:Tomooki Kengaku

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「非日常」の顔となるのは、公園の北西に配置されたモニュメントである。アルミの型押しで成形された大小さまざまな形状の柱を23本組み合わせてできており、優しさと力強さを兼ね備え、手を合わせたような形にも見える。柱の数は、隣接する復興まちづくりセンターを地震のあった2016年にちなんで「にじいろ」と名付けたことから、公園がオープンした2023年に合わせて23本とした。

柱の断面は、益城町の町花である梅の花をモチーフとした柔らかい曲線とし、寒い時期に咲く梅を震災から立ち上がる町の姿に見立てた。職人がひとつひとつ丁寧に手で磨き上げた表面は、モニュメント全体の柔らかさを一層際立たせるとともに、時間や季節によって緩やかに変化する益城町の風景を映し出す。

Photography:Tomooki Kengaku

Photography:Tomooki Kengaku

モニュメントに向かって配置されたプロムナードは、隣接する復興まちづくりセンター「にじいろ」の内部にある記憶のプロムナードまで延長することで、地震発災以降の展示がモニュメントまで連続する印象的なシークエンスが生まれた。

Photography:Tomooki Kengaku

Photography:Tomooki Kengaku

一方、「日常」の主役となるのが人である。「にじいろ」の扉を開くと、プロムナードで縁取られた芝生広場が目の前に広がる。広場の形状は、訪れた人を優しく大らかに包み込む楕円形とし、その西側には演奏やイベントを行う平場を配置。さまざまなところに自分の居場所を見つけられる仕掛けを施している。End

Photography:Tomooki Kengaku

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