ODA COLLECTIONから名作椅子100脚を紹介する
「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」

20世紀とは、1901年から2000年までの100年。その間に生まれた100脚の名作椅子が今、日本橋高島屋で展示されている。

チェアLCW チャールズ&レイ・イームズ 1945 撮影:Kentauros Yasunaga

展示されている家具や食器は、椅子研究家の織田憲嗣が時間をかけて集め、現在、北海道・東川町に収蔵されているコレクションのなかからセレクトしたものだ。

展示期間が短く面積も限られる百貨店での展覧会はいろいろ制約もあるのだろうが、見る方からすれば、美術館の展示とは違って、展示物と近い距離でガラスなどで囲われていない状態の鑑賞ができるのが魅力だ。

ラウンジ・チェア ウォーレン・プラトナー 1966年のノル・インターナショナルの製品。

椅子は、人の身体にもっとも近く、接する時間ももっとも長い家具のひとつだ。人体のカーブにいかに則し重さを支えながら、人間の身体が負担なく快適に過ごせるかを追求し、進化してきた工業製品のひとつといえるだろう。そうした点からすると、バウハウス初期のスティール・パイプの曲げなど、細部がまた違って見えてくるだろう。

誰もが知る名作が集められた、バウハウスやフランスで活躍したデザイナーたちの部屋

一方で、家具や食器というのは生活のなかで使われてこそ価値がわかるわけで、「——時代に生まれ、時代を越える。——美しい生活デザインを100客の椅子から覗く旅」というサブタイトルからもわかるように、椅子を製品としてだけではなく生活の一部として捉え、使われた時代の暮らしを想像させる展示となっている。

なかでも圧巻なのは会場中央に設置されたデザイン黄金時代の、「ノルディック・モダンのティーパーティー」。ボーエ・モーエンセンの長いダイニングテーブルに、北欧の特徴的な椅子14脚が並び、それぞれの椅子に合わせたすべて異なるテーブルウエアがセットされている。北欧には木という材質を活かした椅子が数多くあるだけでなく、ロイヤルコペンハーゲンやグスタフスベリ、アラビアなど、実用的で個性豊かな陶器があるということを再認識させられる。

椅子とテーブルウエアの組み合わせが絶妙な「ノルディック・モダンのティーパーティー」。

こちらはアール・ヌーヴィーの食器シリーズ「セレス」。 テオ・シュムッツ=バウディス 1913 撮影:Kentauros Yasunaga

最後には実際に名作椅子に座れるコーナーも設けられていて、会場をひとまわりすれば、アール・ヌーヴォー、バウハウス、ミッドセンチュリー、イタリアン・モダンといった近代デザイン史の変遷をたどるショートトリップが体験できる。

チェア《ブロウ》 ドナート・ドゥルビーノ/ジョナタン・デ・パス/パオロ・ロマッツィによるはじめて大量生産された膨らませて使う椅子。「バンビーノの秘密基地」に置かれている。

尚、この展覧会は3月27日から4月14日は大阪高島屋、4月18日から5月5日までは、ジェイアール名古屋タカシマヤへと巡回する予定だ。(文/AXIS 辻村亮子)End

カーザ・カルベットのアームチェア アントニ・ガウディ c.1900 撮影:Kentauros Yasunaga

チューリップ・アームチェア エーロ・サーリネン 1957 撮影:Kentauros Yasunaga

椅子とめぐる20世紀のデザイン展

会期
2024年2月29日(木)~3月18日(月)
入場時間
10:30~19:00(19:30閉場)
※最終日3月18日(月)は17:30まで(18:00閉場)
会場
日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール
(東京都中央区日本橋2丁目4−1)
入場料
一般1,200円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料
詳細
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/20thcenturychair/index.html