建築家・髙濱史子が設計したJINS新社屋が完成
カフェ、アート、サウナでクリエイティビティを刺激

Photos by Takumi Ota

アイウエアブランド JINSを展開するジンズホールディングスは、2023年春より稼働を開始した東京都千代田区の東京本社新社屋について、全フロアの⼯事を終え、2023年12⽉末に完成したことを発表した。

「Second Genesis(第⼆創業)」を掲げ、JINSブランドの刷新に取り組む同社は、地上9階建てのビルを⼀棟借りして本社移転を実施。髙濱史⼦による「壊しながら、つくる」を設計コンセプトに、従業員のクリエイティビティを高めるべく、全フロアの⼤胆なフルリノベーションを施した。

執務フロアには、階層の細分化によるスタッフの物理的・⼼理的分断をなくすため、⼤きな吹き抜け階段を設置している。1階には同社が運営する「ONCA COFFEE 神田店」が入居。シンプルな掘立小屋をモチーフに、深い緑色のガルバリウム鋼板の波板でできたスタンドが目を引くデザインだ。「働くソト」として活⽤するなど、オフィスは室内にあるものという常識を覆すような⼯夫がなされている。

「ONCA COFFEE 神田店」

3階の商談室フロアにはギャラリースペースを設け、第1弾としてアーティストの⽴⽯従寛松⽥将英保良雄が共同制作した映像インスタレーション「Gravitation」を展⽰している。谷川俊太郎の詩集「二十億光年の孤独」をモチーフに、落下して割れたカップ&ソーサーの破⽚が仮想空間でふたたび出会う物語を表現した作品であり、浮遊感のある音楽とともに見る人に没入感をもたらし、想像力をかきたててくれる。

Gravitation」1:4の横長の映像を7分割しモニターに映し出す。

割れた陶器そのものも、額装して展示。

5階の執務フロアの吹き抜け部には、⾦沢21世紀美術館館⻑の⻑⾕川祐⼦監修のもと、植物をバイオフィルターとするイタリア発の植物ろ過システム「Fabbrica dell’Aria®(ファブリカ デラリア)」をアジアで初めて導入。ガラスケースの中にある厳選された植物により、室内の空気を浄化するとともに、新しい形のアート作品としても楽しめる。

「Fabbrica dell’Aria®」カシワババンビーノ、モンステラなど多彩な91鉢もの熱帯植物を見ることができる。

リアルタイムで環境を確認可能。

さらに9階には、グループサウナとソロサウナを完備した従業員専用の「ARNE SAUNA(アーネ サウナ)」が登場。従業員同士の偶発的なコミュニケーションを促すほか、アイデアをすぐにディスカッションできるように外気浴スペースにホワイトボードを設置するなど、新しいサウナの活用にも取り組んでいる。

「ARNE SAUNA」のグループサウナ室で従業員同士の偶発的なコミュニケーションを促進させる。

⾃分を解放し ⾃由になるためのソロサウナ室も完備。

外気浴エリアでアイデアのディスカッションも可能。

アフターサウナ時間を過ごせるラウンジ。

高濱史子は「“壊しながら、つくる”は、解体がすでに計画されている建物に対し引き算のデザインして、すべてがお膳立てされた受動的な環境ではなく、使う方がクリエイティブに工夫しながら働くことができるオフィスを目指しました。“壊した”ことでできた余白には、当初から計画していたアートに加え、街とのつながりを生むカフェや、身体の中からリフレッシュしつつ仕事もできるサウナなど、さらにクリエイティブになれる要素が生まれた」とのコメントを寄せている。End