今回は最近見つけた美しい青についてご紹介します。青は年齢やジェンダー、季節や場所を問わず好まれている人気色で、自動車においても有彩色のなかでは世界的に最も売れている色です。特に日本市場では鮮やかな青、くすんだ青、深い青など多種多様に展開されており、青に対するこだわりの強さが感じられます。
例えば、虹の色の表現。日本では青と藍を区別していることから7色として表現されていますが、欧米では6色で表現されることもあるそうです(諸説あり)。藍はJAPAN BLUEとも呼ばれているように、日本人にとって愛着のある存在です。華美であることが禁じられていた江戸時代でも、藍は庶民が手に入れられる色でした。また濃藍には抗菌や消臭、害虫除けといった効果もあり、日々の暮らしに欠かせない存在だったのではないかと想像できます。
冷静、清潔、知性といったクールなイメージで表現されることが多い青ですが、そのなかでも特別に癒しが感じられる藍の魅力をお伝えできればと思います。
静穏な色相諧調
竹に染めを重ねて生み出される藍色が美しいぐい呑み。もともとの素材が持つ色素によって染まり方に変化が生じ、黄味を帯びた柄が現れます。和洋どちらの空間にも合う、シンプルながら味わい深い彩度が魅力的です。
草木染めによる色の濃淡と糸の密度のバランスで立体的な世界を創り出す小倉織。近似色のグラデーションによって時間の流れや空間を感じることができます。
竹藍ぐい呑みも小倉織も隣接する色にはっきりとした境界があるわけではありません。全体的にぼんやりとお互いがなじんでゆく模様を見ていると、心が静まります。
滲んだような明彩度・諧調
こちらは生花を藍で染めながら加工したプリザーブドフラワーです。藍色の濃淡による透け感、深みがあり、色鮮やかな花束とは一味違った魅力があります。端正で凛とした印象がありながらもお互いの存在を柔らかく包みこむ、藍のならではの雰囲気を楽しむことができます。
自動車では白や黒を基調にした配色、コントラストを強調する差し色などで車両の個性を表現しているものがベーシックです。一方で、今回ご紹介したような近似色相や明彩度諧調によっても、自然な調和や流れを感じさせる新しい世界観を表現できるのではないかと思いました。今回は、日本人の美意識になじみやすい藍にフォーカスを当てましたが、まだまだ色の世界は奥が深そうです。