前田圭介/UIDが設計をした
福山市鞆の浦のオープンファクトリー「santo」

Photos by TOREAL

広島県で金属製品の製造を手がける三暁が運営するオリジナルプロダクトのショップ兼オープンファクトリー「santo」の設計を建築家の前田圭介(UID)が担当した。

鞆の浦は、広島の観光地として知られる港町である。古くから多くの船が潮の満ち引きを待つ「潮待ちの港」として栄え、江戸期にはこの一帯に船や錨を修繕する船鍛冶が立ち並んでいたという。昭和40年代には「鞆鉄鋼団地」がつくられ、今日でも70軒以上の鉄工所が稼働している。

そのひとつが1951(昭和26)年創業の三暁で、現在は家具ブランド「TAonTA」やアウトドアブランド「cocinero」なども展開。伝統的なものづくりの技術発信の拠点として「道具をつくって、使う」をテーマにしたオープンファクトリーを2022年8月に立ち上げた。

UIDの前田は、さまざまなアクティビティを包括する、工場特有のスレート(センメントでつくられた建材)で覆われたがらんどうの外部空間と、鍛造技術で制作したテーブルなどに見られるプロダクトの構成や素材感に着目。7×30mの屋根を設け、おおらかな軒下空間をつくり上げた。

外壁がなく、隣接する工場のスレートを壁と見立てている。外壁を取り払うことで、プロダクトをさまざまなところに展示可能にし、ゆったりとしていながら秩序のある空間となった。

このエリアはこれまで、鉄鋼団地という一般の人には近寄りがたい存在だった。「santo」は、この地域を積極的に街に開き、鞆の浦の観光資源へと結びつける新しいランドマークとなるだろう。End

santo

所在地
広島県福山市鞆町後地26-30
営業時間
木・金・土・日 11:00~18:00
詳細
https://www.instagram.com/santo_fukuyama/