REPORT | インテリア / プロダクト / 展覧会 / 工芸
2023.03.14 19:07
コロナ禍で私たちは家にこもる経験をした。その後自分の身近にあるものをじっくりと見直す展覧会がいくつか開催されている。北欧家具のオリジナルを展示する展覧会もそのなかのひとつだが、家具のみならず、ゆったりとした時間の流れをみせる試みの展覧会が、日本橋高島屋本館で開催されていた。
北欧デザインの希少な名品
この展覧会は、日本橋高島屋開店90年を記念し、北欧家具を中心とするコレクターとして有名な、椅子研究家の織田憲嗣氏のコレクションで構成されたもの。「ファスト文化ではない、長く使い続けて、最後の最後まで使い切るという北欧の生活文化の価値観に触れて欲しい」と語る織田氏によれば、今までどこにも出展しなかったものをなるべくセレクトしたという。
全体は5章からなる構成で、百貨店ならではの良さがあらわれた展覧会となっている。椅子、ガラス製品、照明器具、食器、玩具など、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェーを代表する70名以上のデザイナーによる作品が300点以上並ぶ。文字通り百貨店の中で百貨が展示されており、家具と調度品を組み合わせたコーナーや現地の暮らしをレポートした映像も魅力的だ。
時の移り変わりと暮らしを想像する
第3章の「心の居場所」では、現行の名作家具にゆったり腰掛けながら、実際のスケールで再現された部屋の、1日の光の移り変わりを楽しむことができる。
こうした展示の方法は、美術館のコレクションを長い解説文とモノの陳列で見せる展覧会とは一線を画するもので、家具やモノ好きにとっては賛否のわかれるところかもしれないが、筆者には一番興味深い展示だった。なぜならデザインの展示というのは、美術品を見せるのとは違い、実際に使う場を想像できてからこそだからだ。
照明が3分を周期に変わっていく。会場内にある短いテキストのキーワードと併せて、ガラス器の使い方や窓辺の演出のしかたなど、自分の住まいのインテリアにも参考になるヒントが散りばめられている。またこの展覧会は基本的に映像以外の作品が撮影可能となっているので、展示を自分の手で記録することができる。
本展はこの後、名古屋・大阪へと巡回する。展示会場が東京会場よりも広くなるため、出展作品数がより増やされる予定だ。
展覧会にはぜひ、本館正面入り口から入って一番奥の丁寧に磨き上げられた金色に輝くエレベータで8階までのぼって欲しい。案内係がエレガントな所作で手動する重厚な動きには、最近の高層ビルの高速エレベータにはない、ゆったりとした時間の流れと余裕を感じることができる。「ていねいに美しく暮らす」ということを今、あらためて考えてみてはどうだろうか?(文/AXIS 辻村亮子)
ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展
- 会場
- 日本橋高島屋S.C.本館8階ホール
- 会期
- 2023年3月1日(水)~3月21日(火・祝)
- 時間
- 10:30~19:00(19:30閉場)※最終日3月21日(火・祝)は17:30まで(18:00閉場)
- 入館料
- 一般:1,000円(税込)、高校・大学生800円(税込)、中学生以下無料
- 巡回展
- 2023年4月20日(木)~5月7日(日)ジェイアール名古屋タカシマヤ10階特設会場
2023年8月9日(水)〜8月20日(日)大阪高島屋7階グランドホール - 詳細
- 各会場の開催時間などhttps://www.takashimaya.co.jp/store/special/hokuou/index.htmlをご覧ください。