NEWS | インテリア
2022.12.09 17:53
兵庫県・城崎温泉にある、創業300年の日本旅館「三木屋」において、デザイナーの二俣公一率いるケース・リアルによる改修プロジェクトが行われた。
国の登録有形文化財にも指定され、木造建築の随所に歴史の趣が感じられるこの旅館は、老朽化のため、2013年より段階的に改修が進んでいた。全面的なリニューアルよりも、既存の趣や建築当時の思考を活かした「更新作業」が求められたのである。
第四期となる今回の改修では、貸切風呂のほか、かつて皇族を迎えた特別室「22号室」の更新作業が行われた。旅館の中でも、最も広い面積をもつ特別室は、もともと2部屋だった和室を和洋折衷の客室として更新された。
単に和室だった場所を洋間に変更するのではなく、ケース・リアルは、意図的に空間に様々なつながりを持たせた。既存の床を撤去して生まれた高低差を利用して、和室と洋間の間には縁側のような場所が設けられた。
各部屋にあった床の間は和室側だけが残された。構造的に必要な柱は新しく設置しつつ、床の間に使われた板材は、縁側の板の間として再利用した。さらに、洋間の天井やベッドの上部には、古い洋館からインスピレーションを得たアール天井を採用した。
また、左官材で仕上げられた壁と天井は、空間全体を柔らかく演出した。縁側・洋間・和室の境界にあった欄間は、ガラスに差し替えることで、部屋の空間に繋がりをもたせた。
他にも、ひと繋がりだった縁側の中央にあえて間仕切り壁を新設し、洋間と和室の各部屋専用の縁側として再構成した。ガラスにはサンドブラスト加工をかけてグラデーションをつけることで、庭への目線を確保しながらも、開放感と落ち着きを同居させた。
御影石で仕上げた脱衣所と浴室には、青森ヒバ製の浴槽とスチームサウナを設けている。ベッドヘッドの照明やラウンジチェアは、部屋の雰囲気に馴染む仕様として、オリジナルにつくられた。