今回は、9月末から10月初旬に行われたナカダイ主催の「第10回産廃サミット」と東京藝大との「解体のレシピ展」についてレポートしたいと思います。
第10回産廃サミット
産廃サミットは、私たちが考える循環型社会実現のための課題と、その解決に向けた取り組みを講演・対談、ナカダイ前橋支店駒形工場の見学、商談会などをとおして紹介するイベントです。昨年はコロナの影響で中止となったため、2020年10月以来の開催となりました。
講演「異業種連携による循環ビジネスの可能性」では、以前に紹介したサーキュラーパーク九州(以下、CPQ)の構想について、より具体的な循環ビジネスの形を共有するために、その舞台となる薩摩川内市の田中良二市長に、行政としてサーキュラーエコノミー達成に向けた取り組みと連携の狙いについて語っていただきました。
薩摩川内市は、循環経済産業都市として、カーボンニュートラル宣言とビジョンを発信し、SDGs未来都市に選定されています。多くの企業が循環ビジネスを行う際、消費者や自治体との連携を抜きには達成が難しいことは、田中市長の話からも明らかです。
火力発電所跡地の使い方と持続的な地域貢献・地域連携とは
また、今回のビジネス連携の中核企業でもある九州電力電源地域共創担当の春木 優部長にもお越しいただきました。春木部長とは、CPQの構想の輪郭も名称も存在しないなかで、「持続可能な地域貢献、地域連携を確立したい」、「サーキュラーエコノミーを資源循環ビジネスとして実現したい」というお互いの想いだけを共有し、どこに接点や着地点があるかわからないにもかかわらず、議論を重ねてきました。
いまだになにも成し遂げていませんが、お互いのギャップを埋めながら、ビジネスのかたちをつくってきた3年間は大きな財産です。
2日目のパネルディスカッションでは、これだけ規模や業種、主要なビジネス地域が違う両社が連携するまでの3年間のプロセスとこれからのビジョン、計画を話しました。私たちナカダイの役割は、このプロセスを共有することだと思っています。自分たちだけで抱えず、大きな企業における部署を超えた連携や経営層への説明、課題の共有やビジネス協業に向けた議論の積み上げなど、循環ビジネスを実現したい企業のネットワークを広げていくことだと考えています。
その一環である産廃サミットを通して、薩摩川内市役所の職員や、来場した人々に、ナカダイの工場とリサイクルの工程、現実に取り扱っている廃棄物を見てもらうことで、今回のCPQの異業種協業によって、サーキュラーエコノミーが実現可能な段階まで来ていることを体感してもらえたと思います。
解体のレシピ展
企業だけでなく、大学と連携して、9月末に東京藝大と「解体のレシピ展」を開催しました。
実は、私は東京藝大の美術学部デザイン科の非常勤講師を10年ほど務めています。私が教えているのは、“捨て方のデザイン”です。
“捨て方のデザイン”を考える際、スマホやPC、家電、自動車など、製品についての設計やデザインが話題になりがちですが、それだけでなく建物についても考える必要があります。
建物は30年、50年と廃棄=解体されるまでが長く、しかも、施工時と解体時の時間の変化は、私たちの生活も環境も技術も一変している可能性があります。私は、建物には“解体のレシピ”が必要で、それがあることで時代を超えても後始末が容易になると考えています。
そこで、東京藝大美術学部デザイン科の藤崎圭一郎教授と、循環型社会実現のために廃棄物の「解体」を起点に考えたデザインを生徒に提案してもらう「解体のレシピ展」を企画しました。どうしても、「こうするべき」と押しつけっぽい“べき論”が先行しがちな廃棄の分野に、ストレスなく、むしろ楽しめるものとして私たちの生活に溶け込む“循環デザイン”=“解体のレシピ”を生徒達に考えてもらうことが狙いです。
授業では学生に向けた私のレクチャーに始まり、群馬の工場で、現場を体感し、課題に使用する素材を選び、持ち帰り、また現場に来てを繰り返して3ヵ月で中間発表、その後、2ヵ月で展示会まで仕上げました。まだ社会人になっていないデザインを学ぶ学生が、30年後、50年後に向けた循環デザイン、解体のレシピをそれぞれの解釈で表現したことは非常に意義があることだと思います。
異業種協業によるサーキュラーエコノミーの実現には、企業連携だけでなく、薩摩川内市のような自治体との連携や、消費者との連携が重要です。そして、現在のパートナーとの横の連携に加え、将来のパートナーにもなりうる学生(大学)や、もちろん、小学校、中学校で行われている社会科見学、SDGs授業との縦の連携も必要です。現在と未来という横と縦の連携を継続することなしに、持続的な社会は望めないし、サーキュラーエコノミーの実現もできません。
縦か横か、どちらが先でも結構です。
一歩を踏み出しましょう。