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2022.11.16 13:45
スイス出身のアーティスト ダグラス・マンドリー(Douglas Mandry)が新作となるパブリックアート「Gravity Flow(グラビティ・フロー)」を公開している。
アートとサイエンスを融合させた芸術活動をする同氏は、気候変動の影響を受けて絶滅の危機に瀕している景観の象徴であるスイスの氷河を通して、自然界を探求するという。
ラ・プレリーの依頼で制作された同作は、スイス連邦工科大学チューリッヒ校の氷河学者らとコラボレーション。氷河の融解現象に関する多層的な調査を作品に落とし込み、人間と自然の相互作用、流動的な時間の概念に着目してデザインした。
5つの彫刻からなり、すべてリサイクルガラスで造形。氷河甌穴(おうけつ)のモデルを反転させ、凸型にコピーした。地元スイスのガラス職人とのコラボレーションにより、リサイクルガラスを使ってさらなる持続可能性の必要性と、現実の氷河の脆さも表現している。さらに、Climeworksと協働し、空気からCO2を直接除去して回収するという最先端のテクノロジーを用いて、カーボンオフセットを実現しているそうだ。
「Gravity Flow」は、2022年8月からスイス・エンガディン地方のムオタス・ムライユという山頂で、1年間にわたり屋外展示される。また、ラ・プレリーのサイトでは続編となる「Gravity Flow Fragmented」も公開している。
彫刻作品をパブリックアートとして制作し、スイスの自然のなかで展示することで、時間の経過とともに気候変動の結果として氷河が溶けてなくなっていくという、緊急性の高い社会テーマを表現。
人間が自分たちの自然環境をどう感じ、どう想像し、どう関わるべきなのか? アートとして氷河を選ぶことで、気候変動の進行のかつてない速さとその影響についての切迫したメッセージを視覚的に発信している。