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2022.09.22 15:30
建築設計事務所 MVRDVが設計を手がけた、オランダ・アムステルダム ザイダス地区の複合ビル「Valley」がこのほど完成した。高さ67m、81m、100mの3棟のビルで構成されており、まさに植物が生い茂る渓谷を思わせるデザインである。
同地区のオフィス環境に緑と人のにぎわいを取り戻そうとするプロジェクトで、ビジネスエリアの文脈に合わせて前面は鏡面ガラスの外壁とする一方、その向こう側はまったく異なり、ゴツゴツした岩肌のような自然を思わせる外観を備えている。
施設内にはオフィスや住宅、文化施設、飲食店などが入居する予定。ビルの各所からは街の景色を眺めることができ、一番高いタワーの最上階にはバーもあるという。地上7階までがオフィス、8階からは住居エリアと、住む人、働く人、訪れる人のことを考えたレイアウトである。
建物のあいだには、地上から小高い谷間までジグザグに続く歩道があり、屋内には大きな天窓のある洞窟のようなスペースもある。この天窓自体も、上から見るとふたつの谷間にある池に見えるそうだ。
非常に複雑な形状は、全戸に日光が当たり、景色が楽しめるように設計ツールで設計。40,000を超えるファサードの石のタイルも、ランダムなパターンを実現するようにプログラミングされている。198戸のアパートはそれぞれ異なる間取りで、バルコニーや出窓は片持ち式に張り出しており、これまでにないユニークな外観ができあがった。
植栽を担当したのは造園家のピィト・アゥドルフ(Piet Oudolf)。下層階には樹木、高層階には小さな植物と、風や日光、温度、メンテナンスなどを考えながら、各所に適した植物を配置した。
220種の植物には天然石のプランターを用意するとともに、「ファサードガーデナー」と呼ばれる自動灌漑システムによって、今後数年をかけていっそう豊かな緑となる。鳥や昆虫の生物多様性も楽しめるなど、そこに集う人々のウェルビーイングを高めてくれる建築となっている。