フェルメールの名画に隠されたものとは?
「牛乳を注ぐ女」の消されたモチーフが発見

オランダの画家ヨハネス・フェルメールの代表作といえば、「牛乳を注ぐ女」を思い浮かべる人も多いだろう。1657年から1658年にかけて描かれたとされるこの作品について、所蔵するオランダ・アムステルダム国立美術館はこのほど新たな発表を行った。

これによると、「牛乳を注ぐ女」に関して新たな調査を行い、いくつかの驚くべき発見があったという。その発見とは、絵画の下に「水差しホルダー」と「籠」が描かれていて、のちにそれらが塗りつぶされていた、ということだ。

▲The Milkmaid, Johannes Vermeer, c. 1660. Rijksmuseum, Amsterdam, Purchased with the support of the Vereniging Rembrandt

今回の調査では最新のスキャン技術を使用。「水差しホルダー」は、女性の頭部の後ろにある壁に描かれているそうで、黒い絵の具を使ってスケッチしたが、結局は断念。17 世紀の台所には、取っ手を引っ掛けて吊るすタイプの水差しホルダーが使われていたそうだ。

また、「籠」のモチーフは絵画の右下に描かれていた。ヤナギの枝で編んだバスケットで、当時の若い夫婦がいる家ではごくふつうのアイテムとされる。そこには火のついた石炭を入れた火鉢が仕込まれていて、乳児を温めたり、おむつを乾かしたりした。

▲「籠」のモチーフ

この発見により、フェルメールの手法の新たな側面が明らかになった。これまで、彼はささやかな作品を非常にゆっくりと制作し、いつもきわめて正確な作業に取り組んでいたとされていた。だが実際には、女性の左腕の下には黒い太い線がぞんざいに塗られていて、当初は明るいトーンと暗いトーンですばやく描いていたことがわかった。

同館は、発見された制作プロセスから、彼の作品の特徴である静謐な雰囲気は、こうした手法の探求から生まれた可能性があるとしている。End