いわゆる「空飛ぶタクシー」的な製品を開発する場合、多くの人がイメージするドローンのように複数の上向きプロペラ自体で浮上するホバータイプのものと、いわゆる飛行機のように固定翼で揚力を発生させて飛行するものが考えられる。狭い場所を利用して離発着するには、垂直離着陸が可能なホバータイプが有利だが、エネルギー効率では固定翼による揚力飛行のほうがはるかに優っている。
エアモビリティのグローバルリーダーとなることを目指して2015年に創業したリリウムは、その両方の飛行方式のメリットを採り入れるべく、固定翼とダクトファン方式の推進装置を組み合わせた初の電動垂直離着陸飛行機である「リリウム ジェット」の開発に着手。前端部の小型の翼と後端部の主翼を持つカナード(先尾翼)式の試作機「フェニックス2」によって、ヘリコプターのような離着陸やホバリングと、エネルギー効率に優れる揚力飛行を両立させる試験飛行に成功した。
特に難しいとされたのは、ホバー飛行と揚力飛行の切り替えをシームレス、かつ、安全に行うことであり、「フェニックス2」では、前後の固定翼の後端に設けられた複数の小型ダクトファンからなるユニット全体の角度を、垂直~水平の範囲での可動式とすることで実現している。
また、アコースティック・ライナーと呼ばれるダクトファンのカバーは、ファンのノイズを閉じ込めて、周囲への音漏れを軽減する役割を担っており、騒音面でも環境に優しい設計になっているという。
リリウムでは、今後とも試験飛行を重ねながら開発を続け、既存のヘリポートをそのまま利用できるエアモビリティとして、各方面に「リリウム ジェット」を販売していきたい意向だ。