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2022.06.28 14:00
近年、世界中でさまざまなタイプのウェアラブルデバイスが開発されている。そのひとつが、人間の運動機能をサポートするウェアラブルスーツである。
そのなかでも、スイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究チームが開発するのは、筋力が弱い人を支える「ウェアラブルマッスル」である。難病の筋ジストロフィーを抱える人がこれを装着することで、上半身の筋力を補強し、持久力を高めることができるという。
ベストのようなものを上半身に取りつけ、さらに上腕から前腕にかけてもサポーターを装着。ファブリックに埋め込まれたセンサーを介して、アルゴリズムがユーザーの意図する動きと必要な力の量を検出する。
そして、ユーザーの筋肉と平行になったファブリックにはケーブルがついていて、モーターが作動してその長さを調節。これは人工の腱の役割を果たしており、求められる動きをサポートしてくれる。
こうした機能は、ユーザーの動きに合わせて調整でき、各人の好みにも合わせて調整が可能。ユーザーはいつもデバイスをコントロールできるし、どんなときでもこれを無視することさえできるのだ。
研究チームが行ったプロトタイプの実験には、健常者10人、筋ジストロフィー患者1人、脊髄損傷患者1人が参加。結果はいずれも良好で、どの人もこの装置により腕や物をずっと長く持ち上げることができた。
持久力は、健常者でおよそ1/3上昇、筋ジストロフィー患者は約60%増加し、脊髄損傷患者は3倍も長く運動することができるなど、実験の参加者は筋肉への負担の軽減や、デバイスの直感的な使用を体感したそうだ。
開発に携わるMarie Georgarakis氏は、「病院には優れた治療装置がたくさんありますが、その多くは非常に高価で大型です。患者が日常生活ですぐに使えて、自宅で運動するときに使える技術支援は皆無です。こうした欠点を解消することが目標です」と語っている。