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2022.04.06 12:30
和歌山・高野山にて1200年もの歴史を持つ宿坊「恵光院」では、金沢箔の壁面アートを設置した、新しい瞑想空間となる特別室「月輪(がちりん)」が完成した。
「月輪」を手がけたのは、石川県金沢市の金箔ブランド「箔一」と、英国と日本を拠点にする吉本英樹のデザインエンジニアリングスタジオ TANGENT。
両者は2021年より東京大学先端科学技術研究センターと石川県による共同プロジェクトに取り組んできたそうで、そのなかで箔一の寺社仏閣や商業建築における実績や金沢箔のもつ装飾性・デザイン性について、吉本が強く関心を持ったことからプロジェクトがスタートした。
高野山真言密教には「月輪観(がちりんかん)」と呼ばれる瞑想法があるそうで、月の輪に見立てた真円を見つめ、その月輪を自己の心の中に映し、さらに自己の身体全体、その部屋全体へと月輪の心像を広げ、最終的には全宇宙にまで広げていくという瞑想法である。
作品は、この「月輪観」に着想を得て、真円から湧き上がる金箔の渦を壁面いっぱいにあしらい、さらに別の次元の宇宙にワープし広がっていくかのような景色を表現した。さらに、真円には光源が設置されており、周囲に向かって光が放たれるそうだ。
また、制作では、決定したデザインをシルクスクリーンで転写し、ふるいで細かくした金箔をふって少しずつ模様を浮かび上がらせることで、金箔独特のゆらぎのある輝きや、箔の粗さ違いによる表情の変化、箔を払う際に生じる擦れといった、職人の手作業ならではの偶然性が生まれている。
宿坊「恵光院」の名前にちなむとともに、真言密教の教主である大日如来を尊ぶという、光によって金箔を浮かび上がらせるような作品となっている。