オックスフォード大学、AIを活用して
古代ギリシャの碑文を解析

昨今はさまざまな分野で活用されるAIだが、研究の分野でも最新のAIを採り入れ、これまでの手法を一新させる取り組みが行われているようだ。たとえば、英オックスフォード大学古典学部がこのほど発表したのは、古代ギリシャのテキストをAIで分析するというものである。

この研究には、同大学の古典学部と伊ヴェネツィア・カフォスカリ大学、ギリシャのアテネ経済商科大学、そしてGoogle傘下のAI研究企業「DeepMind」が参加。同社が手がけるディープニューラルネットワーク「Ithaca」を使うことで、壊れてしまった碑文の欠損した文字を復元したり、それがもとあった場所や書かれた日付を特定したりできるようになるという。

今回は、この手法で紀元前5世紀の重要なアテネの法律を調査。これまで紀元前446~445年以前に書かれたと推定されていたが、近年歴史家たちが新たな証拠を提出し、紀元前420年代に書かれたとするのが妥当だと示唆していた。一方、「Ithaca」は機械学習を通じてこの法律が紀元前421年に書かれたと予測、見解が研究者たちと見事に一致したのだ。

オックスフォード大学古典学部のJonathan Prag氏は、「文章やモノといった古代の痕跡は膨大な量があり、今でも増え続けています。私たちはそれらを理解したり、より使いやすくするために努力をしていますが、一人ひとりの歴史家には手に余るものです。Ithacaで示したように、AIを使ってこうした資料を読み解けば信じられないほどの機会に恵まれるでしょう。古代の歴史には刺激的な未来が広がっているのです」と語る。

ただ、このモデルはIthacaだけで完結するのではないそうで、歴史家の知見を組み合わせることでその実力を発揮するようだ。たとえば欠損したテキストを復元するとき、Ithacaだけだと精度は62%で、歴史家が加わることで72%にまで上昇。また、Ithacaは碑文がもとあった場所を71%の精度で示し、グラウンドトゥルース(実地データ)から30年未満の精度で年代確定もできるとしている。End