「メゾン・エ・オブジェ」の魅力を日本で体感
「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」のキュレーターに聞く展覧会の見どころ

▲©AETHION

1995年にフランス・パリで生まれた、インテリア業界の「パリコレ」とも呼ばれる世界最高峰のインテリアとデザインの国際展示会「メゾン・エ・オブジェ」は、毎年1月と9月の5日間、パリ ノール・ヴィルパント見本市会場で開催される。前年度の出展数は約3,000ブース、期間中の来場者は約9万人を誇っていた。

▲トレーラー動画(約2分)

ついに、この「メゾン・エ・オブジェ」の魅力を日本で体感できる。「デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展」と題したこの展覧会は、「メゾン・エ・オブジェ」の主催者SAFIが総指揮を手がけ、世界的に有名なライフスタイルのトレンドセッターであり、キュレーターのエリザベス・ルリッシュが全体装飾を担当する。展覧会は、東京・日本橋の日本橋髙島屋で2022年3月3日(木)から3月21日(月・祝)まで開催する。

全3部で構成される同展では、25年にわたり、クリエイション、デザイン、オブジェ、家具、インテリアデザインなどの分野における逸材にスポットを当ててきた。同展は、パリ展の世界観を保持しつつ、さらに、「デザイン・ダイアローグ」をテーマに、より多くのデザイナーとの「対話」を目指している。

展覧会の開催を機に、今年の「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」と「ライジングタレントアワード」のキュレーションを手がけるフランソワ・ルブラン・ディ・シシリアに「デザイン・ダイアローグ」の見どころを訊いてみた。

▲フランソワ・ルブラン・ディ・シシリア
©︎Karel Balas

第1部「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」

過去に「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたデザイナーたちの内、21名の作品が一堂に高島屋に集結する。1つ1つの時代を代表するデザインが会場に登場する。

「ここに選んだ21人は時代を超越したデザイナーばかりです。こうした卓越したデザインが何十年にもわたって影響を与えつづけていることを示したいと思います」とフランソワは語った。

フランソワは、「デザインの多様性を示すとともに、私たちの日常生活におけるウェルビーイングや環境保護、審美性についての現代のリサーチへの回答にもなるように目指しました。そのために、私たちは市販されている作品を選びます」と述べた。

▲1999年度デザイナー・オブ・ザ・イヤー受賞者 Paola Navoneの作品  
©GERVASONI

▲2022年度デザイナー・オブ・ザ・イヤー受賞者 FRANKLIN AZZIの作品  
@Franklin Azzi Architecture, Daumesnil, Paris, 2021

第2部「ホワッツ・ニュー」

デザインは、こうした熟成した一面がある一方、フランソワはこの25年間の変化について、「デザイナーの仕事のなかで進化してきたものとして、新しいテクノロジーやマテリアルを挙げることができるでしょう。これらがそのつどデザイナーの活動領域を押し広げてきました。カルテルのためにフィリップ・スタルクがAIを活用してデザインしたチェア『A.I.』などはその好例といえます」と解説した。

そこで「デザイン・ダイアローグ」の第2部では、出展者の新作コレクションとともに今日のデザインの進化を表現する「ホワッツ・ニュー」が展開される。このゾーンでは、世の中の消費動向やライフスタイルの変化を分析し、これからのトレンドを提案してきたため、パリの会場でもハイライトのプログラムとなっている。

今年のパリのメゾン・エ・オブジェ1月展が延期されたことで、「デザイン・ダイアローグ」でパリ会場のエッセンスを一足先に楽しむことができる。

▲毎年注目されるプログラム「ホワッツ・ニュー」
©AETHION

第3部「ライジング・タレント・アワード」

メゾン・エ・オブジェは、毎回ひとつの国にスポットをあて、若い世代のデザイナーを発掘し、世界に向けて「ライジング・タレント」として紹介してきた。今年のパリの3月展では日本の新鋭デザイナーたちを特集する。

そこで、第3部「ライジング・タレント・アワード」では、2022年の日本人受賞者と近年注目されているフランスの逸材の作品をフランソワのキュレーションで紹介する。

いまの若手デザイナーについて、「技術的には高度なスキルを備えていると思います。さらに、環境問題や資源の欠乏、増え続ける使用済み材料、エネルギーや生産にかかるコストといった、現代の課題も直視してきました」とフランソワが語った。

そのうえで評価したいのは、「配慮あるデザイン(conscious design)」と呼びうるようなものだという。「デザインでは、環境をはじめ、現地生産、各地にあるノウハウの活用、個性の発揮や社会へのコミットメントを通じた多様性の実現など、さまざまな基準を考慮に入れる必要があるでしょう」。

そして、重要となるのは「デザインにおける誠実さや体験がもたらす純粋な喜び」だという同氏。「とりわけクリエイティブなデザインにおいては、デザイナーと他の人たちをつなぐ感情もまた、作品を評価するうえで私たちの鍵となるものの1つだ」。

また、日本のデザインに関しては、「詩的なものが見事に融合していることに感服しています。他にはないこの調和の感覚は、インダストリアルデザインだけでなく、建築デザインやクリエイティブデザインなど、あらゆる作品で感じることができます。長い伝統がある工芸技術は、テクノロジーや産業資材とも絶妙のバランスで結びついています」と強調した。「日本のデザインには、私たちを世界へとつなぐ共感に根ざしたアプローチがあるのです」と、その想いを語ってくれた。

▲「動紙」/三澤遥
©Masayuki Hayashi

▲「ForestBank」/狩野佑真
©︎STUDIO YUMAKANO

さらに、会場のイントロダクションには、かつて高島屋で開催されたシャルロット・ペリアン展「選擇・傳統・創造」(1941年)から不朽の名作も登場する。これを機に、世界的に注目されるデザインを体験してみるのはいかがでしょうか。End

デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展

会期
2022年3月3日(木)~3月21日(月・祝)
※会期中無休
入場時間
10:30~19:00(19:30閉場)
※最終日3月21日は15:30まで(16:00閉場)
会場
日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール

巡回予定

会期
2022年4月28日(木)~5月9日(月)
会場
京都高島屋7階グランドホール
会期
2022年8月17日(水)~8月30日(火)
会場
ジェイアール名古屋タカシマヤ 10階特設会場
詳細
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/maison-objet/top.html